高齢になったら肉や脂肪を抑えて野菜中心のさっぱりした食事が良い。堅いものは控えた
方が良いなどとよくいわれる。しかし、気をつけないと偏食になったり、栄養のバランスが崩れて、老化を促したりする。

荒川典子・田中久恵氏の『百歳の食卓』によると、元気な百歳以上の高齢者11人を調査したところ、あぶらっこい物など好きな物は我慢せずなんでも食べ、粗食の人は見られなかったと述べている。

過日、NHKテレビ特報首都圏“長寿研究最前線”(2002年12月13日放映)の中で、当時107歳(1895年生まれ)という超高齢男性の食事が紹介された。この男性の大好物はトンカツだというのだ。食卓には普通サイズのトンカツが一口大に切られて置かれていた。その他、野菜の煮付け(人参、ピーマン、コンニャクなど)、きんぴらごぼう、具沢山の味噌汁、ごはんといった生活習慣病を予防する野菜の多い献立である。

家族と一緒にとてもおいしそうに食べていた。男性の長女は「特にお年寄りの食事といったものは作りません。家族と同じものを万遍なく摂っています。ただし、どれも少量ずつ、ゆっくり時間をかけて食べます」といっていた。

男性は若々しくとても元気。人に頼らずなんでも自分でやっているそうだ。毎日の日課は新聞をじっくり読むこと、それも政治欄やスポーツ欄に興味を持っている。

老いても一向に衰えないのは、このようななんでもバランスよく食べる食習慣に起因するものと思われる。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2005.9.17 日経新聞