伝統型、胃がん多く



食生活パターンとがんリスクとの関連性を調べる疫学方法がある。例えば、ご飯とみそ汁と漬物など、よくある食品の組み合わせの相互関係に注目する。食生活がどのパターンにどれくらい当てはまるかで集団をグループ分けし、がんリスクを比較する。

われわれが実施している日本の地域住民を約10年追跡調査したデータから、食生活パターンによるがんの発生リスクについて検討した結果を紹介する。

まず、44項目の食習慣についてアンケート調査を実施、結果をコンピューターで分析し、該当集団の代表的な食生活パターンを検出する。浮かび上がった食生活のパターンは「伝統型」「欧米型」「健康型」の3つだ。

欧米型の人は、ベーコン、獣肉類、パン、バター、チーズ、マヨネーズ、炭酸飲料、果汁、野菜ジュース、コーヒー、紅茶などをよく食べる。

健康型の場合、野菜、果物、海藻、じゃがいも、ヨーグルト、きのこ、大豆製品、牛乳、卵を好む傾向がある。女性だと、野菜と果物の摂取量が多い。

伝統型は、塩蔵魚卵、漬物、魚の干物、みそ汁、米、魚介類など。男性では日本酒を好む。

男女約2万人ずつを対象に、食生活パターンと胃がん、大腸がんとの関連について検討した。男女別に、3つの各パターンについて、個人個人の食習慣を、関連の度合いが最も強いから最も弱いまでの4段階でグループに分け、リスクを比較した。

対象者の食生活パターンが伝統的であるほど、胃がんリスクが高くなった。塩蔵魚卵などの高塩分食品によって、胃がんが発生しやすい環境が作られるためであろう。また女性では、野菜・果物に象徴される健康型である人ほど胃がんリスクが抑えられた。

大腸がんリスクについては、男性だとどの食生活パターンでも変わらなかった。女性では、伝統型に当てはまるグループで結腸がんリスクが高くなる傾向がみられた。大腸がんは欧米型の食習慣が原因とよくいわれるが、そう単純でもなさそうだ。

(国立がんセンター予防研究部長  津金 昌一郎)

2005.7.17 日経新聞