ウナギは古来から滋養強壮の魚とされ、『万葉集』の中には大伴家持の歌として「石麿呂に吾もの申す、夏痩せによしといふものぞ鰻(むなぎ)とり食せ」とある。これは痩せっぽちの石麿呂に鰻を勧め夏ばてしないように忠告したのだという。夏の土用の丑の日にウナギを食べる風習があるが、一説によると江戸時代中期の本草学者、平賀源内がウナギは夏の薬になると宣伝したことに始まるといわれている。

ウナギには夏不足しやすい良質なたんぱく質と脂肪がたくさん含まれ、他にビタミン、ミネラルも豊富で、まさにスタミナ食品。コレステロールの多いのが心配されるが、脂肪にはコレステロールを抑えるオレイン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)のような不飽和脂肪酸がたくさん含まれているので、それほどコレステロールの心配をしなくてよいだろう。

なおコレステロールは性ホルモンや夏の暑さなどのストレスに対抗する副腎皮質ホルモンを作るのに必須のものだから、日ごろ、肉や脂肪の不足しがちな人たちがとると、強壮強精効果が得られるかも知れない。

ほかに皮膚や粘膜を丈夫にし、美肌作りやまた抗がん作用のあるビタミンA、疲労回復に貢献するビタミンB1、B2、老化を防ぐビタミンE、骨を丈夫にするビタミンDなども多く含まれている。しかし、ビタミンCや食物繊維がウナギにはないので、これを補うために、野菜や海藻、果物を一緒にとることが大切だ。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2005.7.16 日経新聞