医食同源という言葉は日本はもちろん、中国や韓国でもよく使われているが、その出典を聞いてみても明確な答えは返ってこない。

筆者は1972年9月、NHKテレビ『きょうの料理』の特集「40歳からの食事」の中で6日間料理を担当し、その中で、医食同源と言う言葉を発表した。薬好きの日本人は生活習慣病は日常の謝った食事にあるということを忘れているので、臨床医の立場から、これを是正するため、「食は薬の上位にある」ということを強調したかったからである。

医食同源とは「薬(生薬)も食も同じ源、日常の食事で病気を予防し治療しよう。その食事はバランスのとれた美味しい食事である」と定義した。医食同源は中国にある薬食同源思想「食物は飢えた時とれば食であり、病の時とれば薬である」という考え方を拡大解釈したものである。

ところで、ここでいうバランスには2つの意味がある。1つは栄養のバランス、もう1つは陰陽五行説に基づいたバランスである。これは今から2000年位前に著された、中国最古の医学書『黄帝内経・素問』に「五穀を養とし、五果を助とし、五畜を益とし、五菜を充とす。気味の合うものを食すれば補精益気の功あり」と記されていたことによる。

つまり栄養のバランスをとり、さらに気、すなわち陰陽(寒熱)のバランスと味。酸、苦、甘、辛、鹹(塩からい=かん)の五味のバランスをとること。現代風にいえば、食物同士を組み合わせて美味しくとり健康を維持することである。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2005.6.25 日経新聞