冬のかんきつ類 健康効果たっぷり

                白いスジ・ワタも有効成分


 こたつの上には、カゴに入ったミカン・・・。こんな光景も、最近はあまり見かけなくなった。しかし、ミカン(温州ミカン)をはじめとする冬のかんきつ類には、現代人の病気予防に役立つ成分がいっぱいだ。

 「ミカンをよく食べる人には、糖尿病や高血圧、心臓病、通風の人が少ない」と話すのは、農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所健康機能性研究チームの杉浦実主任研究員。約6千人を対象に行ったアンケート調査で、ミカンをあまり食べない人(週に2、3個まで)に比べて、ミカンが大好きな人(1日4個以上食べる)はこれらの病気になる危険性が2-5割も低かった。「ミカン色」のもとである、色素成分のβクリプトキサンチンが活性酸素の害から体を守り、生活習慣病やがんを予防すると考えられる。

 しかもこの成分は、「体内のいろんな臓器に蓄積されやすい」(杉浦主任研究員)という性質を持っている。杉浦主任研究員らの研究によると、1月にたくさんミカンを食べていた人ほど、ミカンの季節ではない9月でも、βクリプトキサンチンの血中濃度が高いまま維持されていた。ふゆのあいだ、いつもミカンをコタツの上に置いて食べるという昔ながらの団らん風景は、健康にもいいというわけだ。
 さらに、βクリプトキサンチンには、脂肪細胞が大きくなるのを抑える作用と、脂肪の合成を抑える作用があることを、京都大学大学院農学研究科の河田照雄教授らが10月開催の第28回日本肥満学会で発表している

 ミカンのスジやワタ、袋といった白い部分も、残さず食べたい。豊富に含まれる水溶性の食物繊維「ペクチン」は便通改善にも役立つことが分かっている。またこの部分には、抗酸化成分のヘスペリジンも多い。ヘスペリジンには骨を丈夫にする作用があり、骨粗しょう症の予防効果が期待できる。ほとんどのかんきつ類に含まれる成分だが、含有量はミカンがトップという。

 この季節、鍋物や吸い物のあしらいに使われるユズは、香り成分のリモネンに、冷え解消作用がある。「リモネンは、毛細血管を開いて血行を良くする」と高知大学農学部の沢村正義教授はいう。
 ユズといえば、皮の部分を使うもの、と思っている人も多いが、スジやワタ、袋、皮に含まれる成分には抗菌作用があることを、高知女子大学生活科学部の佐藤之紀准教授が確認している。種の周りに含まれる精油やぬめりは「保湿成分として、化粧品の原料にもなっている」と佐藤准教授。「ユズ湯に入ると風邪をひかない肌が強くなる」といういわれにも裏付けがあるようだ。

 地方ならではのかんきつ類にも注目したい。まずは数年前から、「花粉症にいい」と話題になっている和歌山県北里村の特産「ジャバラ」がある。
 同村は、花粉症に悩む人をインターネットで募集し、約1500人にジャバラの果汁を飲んでもらうモニター試験を行ったところ、半数近くの人で鼻炎などの症状が軽くなったという。和歌山県工業技術センターの研究報告によると、ジャバラは、アレルギー症状を引き起こす物質が体内で放出されるのを抑える作用が、ほかのかんきつ類よりも強いようだ。

 一方、人気も知名度も上がっているのが沖縄県の特産「シークヮーサー」だ。皮や果汁に含まれる抗酸化成分のノビレチンは、高めの血糖値や血圧を下げる作用や、がんの抑制作用があると指摘されている。
 生の果実は出回る時期が短く手に入りにくいため、広く出回る100%果汁を常備するのが便利だ。皮ごと窄汁しているから、実だけ食べるよりも、ノビレチンをたっぷりとれる。飲み物に加えると、あと味がさわやかになる。

 冬の間、手軽に入るかんきつ類と、年中使える便利な100%果汁を、冬の食卓に。
(日経ヘルス編集部)

2007.12.22記事提供:日経新聞