梅干しが好まれる理由

梅干しは日本の伝統食品のひとつで、万人から愛され、海外に出る時には多くの人が持参するほどの必需品だ。なぜこんなにも好まれるのか。栄養の面から見ると、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルといった栄養素はあまり含まれていない。しかし独特の酸味に魅力があり、その主体はクエン酸、これに素晴らしい効用がある。

クエン酸は食欲を増進させ消化吸収をよくする。強い酸味が口腔粘膜を刺激し、唾液(だえき)とともに胃液の分泌を促し、大腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にし便通をよくする。梅干しは見ただけで唾液が出てくるが、これは食べたときの強い酸味の記憶から反射的に起こる。

第二に、疲労回復に役立つ。クエン酸はエネルギーを作り出すクエン酸回路の材料で、これをとることでクエン酸回路が活性化されるからだと考えられている。

第三に、抗菌や防腐効果がある。クエン酸が細菌のたんぱく質を凝固する働きがあるからだ、昔からおにぎりや弁当に梅干しが使われる。しかしここで注意しなければいけないのは、1個まるごと入れただけでは梅干しの周囲のごはんしか抗菌効果は期待しない方がいい。この効果を広く得るためには、梅干しや梅漬けを細かく刻んでごはんと混ぜ合わせることが必要だ。

第四に、クエン酸はカルシウムと結合して吸収を促す働きがあるので、小魚などのカルシウムの多い食品と一緒にとるとよい。

これらの素晴らしい効用があるので梅干しは歓迎されるのだろうが、保存食品なので食塩が大量に使われているため、とり過ぎには注意したい。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.7.21記事提供:日経新聞