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アロマで手術前にリラックス

東京 手術前アロマでリラックス

日本医科大 血圧上昇防ぐ効果も

  手術前にアロマの香りでリラックス--。日本医科大学眼科の志和利彦・診療教授が4月から、手術を受ける患者の待合室や、外来の診察室でラベンダーのアロマオイルをたく試みを始めた。手術前の患者の緊張をほぐすのが狙いで血圧の上昇を防ぐなどの効果もあるという。「手術前の緊張が和らいだ」と患者からも好評だ。 (小泉朋子)

  文京区千駄木の日本医科大学付属病院。5階の眼科外来には、病院には似つかわしくないラベンダーの香りが漂う。香りは、ディフューザー(芳香拡散器)と呼ばれる円すい形の箱から広がる。中には、ラベンダーの精油が入っている。

  ディフューザーは、外来の診察室と、短期入院で手術を受ける患者の待合室に一つずつ置かれている。

  「いい香りでしょ。意外と、男性にも好評なんですよ」と志和教授から笑みがこぼれる。きっかけは、志和教授自身が、腹部の腫瘍(しゅよう)を切除する手術を受けたことだ。どちらかというと無機質な手術室や病室で不安が高まり、気持ちが沈んだ。そして、「病院をもっと快適で、患者さんが前向きになれるような場所にしたい」と考えるようになった。

  志和教授は昨年12月、ある調査を行った。手術を受ける患者に血圧計をつけてもらい、血圧と心拍数を測り、どの程度ストレスを感じているかを調べた。

  その結果、患者は、手術台に乗った時よりも、手術前の待合室で、血圧や心拍数が上がり、緊張状態になることが分かった。志和教授は、「自分の経験を振り返っても、手術室に入ってしまえば、“まな板の上のコイ”の心境で腹も据わるが、その前は『何をされるのか』と不安でいっぱいになる」と話す。

  そこで、待合室で患者の緊張をほぐす方法がないか考え、アロマオイルの導入を思いついた。それだけでなく、待合室では看護師がきちんと患者と向き合い、世間話などをして緊張をほぐすよう努めている。

  以前は、手術前に緊張から血圧が急上昇し、薬を注射して下げることもあったが、アロマ導入後は血圧が急上昇する患者はほとんどいないという。白内障の手術を終えた会社社長渡辺健さん(62)は、「とてもいいにおいで気持ちが安らいだ。霧が出ているので見た目もいい」と話す。

  好評なら今後、手術室内部などにも設置し、香りも様々な種類をそろえることを検討している。志和教授は、「病院に来たからには、元気を取り戻して帰ってほしい。アロマを患者さんにとって良い環境を整える一助にしたい」と話している。

2010.4.24 記事提供:読売新聞