肥満には2つの型がある。1つは皮膚の下に脂肪が多くつく皮下脂肪型肥満、もう1つは内臓のまわりに脂肪が多くつく内臓脂肪型肥満だ。

前者は中年女性に多くみられる下半身が太ったタイプ。後者は、中年男性に多くみられる腹部がポッコリ出てくるタイプで、この場合は、動脈硬化を促進し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞を引き起こす怖い肥満で、近年、メタボリックシンドロームとの関係が注目されている。

内臓のまわりに脂肪がたくさんたまると、分解されて大量の遊離脂肪酸が放出され、肝臓に取り込まれる。これがたくさんの中性脂肪を合成し、高中性脂肪血症が起きて動脈硬化を促すと考えられている。さらに内臓脂肪が増えると、生理活性物質が多く分泌されるようになる。

こうした物質のうちTNF−アルファは、インスリンの働きを抑え糖尿病の発症にかかわる。同じくアンジオテンシノーゲンは血管を収縮させ血圧を上げる。PAI−1(パイワン)は血栓をつくりやすくする。その一方で、動脈硬化を防ぐ働きをしているアディポネクチンというものの分泌が減ってしまう。

内臓脂肪が増加することは恐ろしいが、皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満をどのように区別するのだろう。内臓型はおへその回り(腹囲)が日本人なら男性で85センチ以上、女性では90センチ以上の場合に疑われる。暴飲暴食や、野菜不足で炭水化物と脂肪を一緒に多くとりがちな人に起きやすいので、対策としてこれを是正したい。さらにウオーキングなど運動をしっかりすれば、短時間で内臓脂肪を減らすことは可能である。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2006.6.10 日本経済新聞