のどに厳しい乾燥の季節
鼻づまりで症状悪化も

空気が乾燥し、のどを痛めやすい季節を迎えた。のど荒れを放っておくと、風やインフルエンザを呼び込むこともある。それだけに日々の気遣いが大切。職場や出先でのどを守るため、手軽にできる方法を探ってみた。

東京・目黒区内に住む会社員檜山美和さん(37、仮名)は、もともと気管支が弱かった。8年前に、慢性へんとう炎と診断され、へんとう腺を切除した。そんな彼女は季節の変わり目になると、のどの粘膜にひっかかりがあるような感じが続く。風をひけば、最初にのどが腫れ声が出なくなる。このため外出から帰ったら必ずうがいをし、常に机の上にお茶のペットボトルを置いて水分補給をするなど、自衛に務めている。

喉頭(こうとう)疾患や音声障害の治療が専門の国際医療福祉大学東京ボイスセンターの福田宏之所長は、「のどの粘膜にとって湿り気は大切。いわば自動車のエンジンオイルのようなもの」と解説する。のどの粘膜は繊毛に覆われていて、ウイルスの体内進入を防ぐ構造になっている。乾燥した空気を吸い続け、粘膜が乾くと繊毛が動かなくなり、結果としてほこりやウイルスを排除する機能が低下し、炎症を起こしてしまうからだ。

福田所長が保湿策としてまず推奨するのは、檜山さんが実行しているうがいだ。基本動作ともいえるが、手軽な乾燥対策として効果が大きい。さらにバッグに飲料のペットボトルを携帯し、こまめに水分補給を図ることも有効だとする。
また、あめやトローチをなめることも有効だという。「コンビニエンスストアで売っているのどあめでも、まったくかまわない」(福田所長)。あめをなめる時にでる唾液(だえき)が、口腔(こうくう)粘膜全体を潤すことになるからだ。

ちなみに、酢昆布やガムなど、咽頭の分泌機能を刺激するものを口にするだけでも乾燥予防になる。「梅干しや夏みかんを想像しただけで、唾液(だえき)が出る。それだけでも、のどの乾燥には効果がある」(福田所長)。要は、物理的にのどに湿り気を与え続けることが重要というわけだ。

この時期、特に注意すべきは鼻づまりの人。通常、鼻で呼吸する場合は、鼻の粘膜が乾燥した空気に湿気を与えてくれる。しかし、鼻がつまると、口呼吸だけになってしまい、よけいに、のどの粘膜が乾いてしまう。薬局などで扱う点鼻薬を使って、鼻の通りをよくするだけでも、のどへの負担が減る。

また、ぜんそくや花粉症などアレルギー体質の人も、空気乾燥の影響を受けやすいので、注意が必要だ。問題外なのは喫煙。まったく湿り気のないたばこの煙を吸うことで、自ら積極的に、のどの粘膜を渇かしてしまう。

保湿と同時に粘膜の保護や保温も大切だ。欧州では、のど荒れの際、リンゴなど果物を搾ったジュースにはちみつを加えた糖度の高い飲み物を飲む。東京薬科大学薬学部の岡希太郎教授は「糖分は刺激が少なく、粘膜保護作用もある。また果物やはちみつ自体、栄養価が高く体力が落ちているときに良い」と効果を認める。

岡教授が薦めるのは外出時のマスク着用。ただ、女性の場合、どうしてもメークがくずれやすい。そんなときは「スカーフやマフラーなどで首を覆って温め、血流を良くするだけでも免疫力を高める効果がある」。

のど荒れを放っておくと、のどの上の部分にある上咽頭(いんとう)が炎症を起こし、ヒリヒリし始める。さらに中咽頭が炎症を起こし、へんとう炎に進行。声帯も乾く。そのまま無理をして声を出していると、ポリープができるなどして、声が出にくくなる上、気管支炎になる危険もある。

特に女性の場合、発生の際、声帯が1秒間に約250回と男性の2.5倍も振動している。「普段から、女性の方が声帯に負担をかけている。それだけに、のどの健康には気をつけないといけない」と福田所長は強調した。



日常生活でのどを守るために

保湿
うがいやこまめな水分補給
・うがいはうがい薬を使わなくても、水でもOK

あめや酢昆布などを口に含む
・市販ののどあめでかまわない 口を動かすことで、だ液が出るのでガムをかむことも有効

マスク着用
・鼻やのどの保湿効果がある。

保護
糖度の高い飲み物
・糖分には粘膜保護作用がある 特に果物には傷ついた細胞の修復を促すビタミンCなども豊富

保湿
マフラーやスカーフ、タートルネックのセーターなど
・首を冷たい外気から守り、のどのまわりの血流をよくすることで免疫力を高める






2005.11.5 日本経済新聞