「血圧は大丈夫」と思っている人も

いつも血圧は正常なのに医師や看護師の前で測定すると血圧が高くなってしまう「白衣高血圧」。それとは逆に、測定時は正常でも自分の知らない時間帯に血圧が高くなってしまっている「仮面高血圧」の人が増えています。今回は、池谷医院院長の池谷敏郎先生に「仮面高血圧」の実態とその予防法についてうかがいました。

測定時は正常な「仮面高血圧」

「仮面高血圧」とは病院などで血圧を計った際には正常値であるにもかかわらず、早朝や夜間、あるいは職場などで血圧が高くなっている症状のことを言います。この症状は高血圧の治療を受けている人も、受けていない人にも見られるという厄介なもの。「病院で血圧を計ったら正常だった」「健康診断では問題なかった」と安心し、気にもしていなかったが、実は「仮面高血圧」だったという人が最近多いのです。「仮面高血圧」とは気付かず放置し、発見が遅れてしまうと、結果的に心臓や腎臓などの障害が進んでしまったり、脳卒中や心筋梗塞になる危険性が高まったりするので、通常の高血圧異常に用心が必要だと言えます。

早朝に注意が必要な「早朝高血圧」

「仮面高血圧」の中でも特に多いのが早朝に血圧が上がる「早朝高血圧」。一般的に朝は自律神経の働きによって、だれでも血圧があがります。「仮面高血圧」の場合、この現象が顕著となり必要以上に上がってしまいます。「早朝高血圧」には、夜間から早朝にかけて寝ている間ずっと血圧が高い「夜間持続型」と、夜間寝ている間は正常でも、明け方から急激に血圧が上がる「早朝上昇型」があります。

自宅での血圧測定が発見のポイント
「早朝高血圧」を発見するには、日ごろから自宅で血圧を計り、早朝に血圧が高くなっていないかをチェックすることが大切。朝、血圧を計る際には、以下の3点を守りましょう。
・起きてから1時間以内  ・排尿をすませてから  ・食事前

血圧の目安は上が135ミリHg、下が85ミリHg。実際に血圧がこの数値よりも高く、起きても疲れが取れていない、肩が凝っている、寝汗をかくなど、いくつか複数あてはまる場合は「仮面高血圧」の可能性があるかもしれないので、一度、医師に相談してみることをおすすめします。

血圧の低い人も油断大敵 「職場高血圧」

血圧は常に変化しています。病院などで血圧を測定する場合は心身を安静にした状態で測定しますが、実際はトイレを我慢したり、ストレスや緊張を感じたり、重いものを持っただけでも血圧は上がってしまいます。自分は血圧が低いと思っている人でも、気をつけたいのが「職場高血圧」。職場でストレスを受けたり身体を動かしているうちに血圧が高くなってしまっています。
この症状も日ごろから自分では気が付きにくいので「早朝高血圧」同様、注意が必要です。仕事をしながらもリラックスを忘れないよう心がけましょう。

高血圧予防のための生活習慣
高血圧を予防するには、塩分・肥満・ストレスに気をつけること。栄養バランスに注意して特定保健用食品なども活用してみましょう。これから寒くなる時期は血管が収縮して血圧が上がりやすくなるので注意が必要です。朝は目が覚めたら急激に起き上がらずに「腹式呼吸」を行うこともおすすめです。空気を吸ってお腹をふくらませ、空気をゆっくりと吐いてお腹をへこませます。これを5−8秒の間隔で約1分−2分間ゆっくりと行うことがポイントです。さらに足浴や手浴をして末端の血液の循環を促すことも効果的。下着なども暖かいものを身につけ身体を冷やさないようにしましょう。自宅での血圧測定をはじめ、24時間にわたって血圧を意識して「仮面高血圧」を予防しましょう。




チェックシート
もしかして、あなたも「仮面高血圧」?!

日ごろの健康状態や生活習慣をチェックしてみましょう。
チェック項目が多いほど「仮面高血圧」の可能性が高いといえます。

□寝汗をかく

□夜中によく目が覚める

□朝起きたとき、首や肩の疲れが抜けていない

□塩分の多い食品をよく取る

□職場でストレスを感じることが多い

□仕事が忙しくトイレを我慢することが多い

□重いものを運ぶことが多い

[監修:池谷医院院長 池谷敏郎氏]

2005.10.29 日本経済新聞