後ろ姿をすっきりと
きつめの負荷に効果

なだらかな弧を描く肉付きの良い背中に、揺れる二の腕――。後ろ姿には年齢が表れやすく、油断していると老けた印象を与えることもある。ふだんの生活であまり動かさず、自分で確認しにくい部位だからこそ注意が必要。それには肩胛骨(けんこうこつ)まわりの運動がポイントになる。

「はい、背中を丸めず胸を張って」。軽快な音楽が流れるなか、インストラクターの声が教室によく響く。ある平日の午後、コナミスポーツクラブ大山(東京・板橋)の「ボディパンプ」講座で15人ほどの男女生徒がバーベルを手に汗を流していた。

「背中のだぶつきはずいぶんなくなった」と話すのは東京・板橋に住む60代の主婦。この日は全身の運動を目的としつつ、背中の引き締めを狙う動きを多く取り入れていた。

直立した状態から胸を張り、ひざを曲げて2キログラムのバーベルをひざから腰のあたりまで引き上げ、おろす。それを3回繰り返して最後に肩胛骨をくっつけるイメージでぐっと胸を張る。これで1セット。家でやるならペットボトルなどを代用し片手ずつ交互にやるとよい。

女性なら体の線が出やすいカットソー1枚や袖無しニットで過ごすことも多い季節。おなか回りや下半身以上に、後ろ姿のラインは目立つ。

「脂肪はぶら下がれるようなところにつきやすい」と話すのは東京学芸大学教育学部健康・スポーツ科学科の宮崎義憲教授。お尻、あごの下と並び、二の腕や背中の肩胛骨の下も危険地帯となる。

しかも皮下脂肪はなかなか減らせないのが現実。血中の脂肪酸を現金に例えるなら、内臓に蓄えられた内臓脂肪が普通預金、そして皮下脂肪は定期預金にあたる。宮崎教授は脂肪が消費されていく順番をこうたとえ、道のりの険しさを説く。

だがあきらめるのは早い。「筋肉を鍛えれば脂肪を引き下げて形を変えられる」。例えば上腕二頭筋や三頭筋の筋肉を鍛えれば、二の腕の脂肪も引き上げられてだぶつき感がなくなってくるという。

腕の筋肉を鍛えるなら、片方の手の甲の上にもう一方の手のひらを重ねて腕立て伏せをすると効果的という。合わせて上体をそらす背筋運動も。いずれも「8−10回で息が上がるくらいの負荷」をかけるのが目安。これを1日3セットほど繰り返す。

アスリートだった経験を基に健康作りプログラムを提案する饗庭秀直・茨城大学教育学部講師は「普段ほとんど動かさない肩胛骨を大きく動かすのがポイント」と話す。

実践的なプログラムのなかから2つほど見てみよう。

まずは親指を立てて両手を軽く握る。両方のひじを曲げて親指を鎖骨の内側にあて、その親指を中心に腕と鎖骨を20度ほど引き上げるイメージで上下させる。同じように親指を鎖骨の内側にあてて、曲げたひじを前後に動かす。最後は親指を中心に肩胛骨を動かすイメージで曲げたひじをぐるぐると大きく回す。いずれも5−10回程度。

次は、両腕を肩の高さで左右に水平に広げる。そのままひじを上方に曲げ、前腕と指先が上に向くようにする。これが運動の基本ポーズとなる。このポーズから、指先を下に向けるように前腕を前に倒す運動を10回繰り返す。

指先を上に向けたポーズに戻ったら、肩胛骨を縮めるような感覚で、腕を後に引いては戻す運動に移る。さらに息を吐きながら、両手の甲を打ち合わせるように前に伸ばす。両腕の筋肉がねじれていることを意識する。いずれも10回ずつ繰り返す。

どの運動も“効く”感じがする。「きついくらいでないと効果は期待できない」(饗庭講師)ので、無理は禁物だがしっかり筋肉を動かす。正しいやり方で10日から3週間毎日繰り返すと効果が表れてくるという。まず自分の後ろ姿を意識することから始めてみてはいかがだろうか。


肩胛骨の運動4ポーズ

1.手を軽くにぎり親指を立てて鎖骨の内側にあてる

2.鎖骨と腕を一緒に上に20度、下に10度動かす

3.鎖骨と腕を前後に動かす。後ろに引く時は肩胛骨がくっつくイメージ

4.背中のように鎖骨を中心に腕をぐるぐると回す


2005.10.29 日本経済新聞