腸内細菌:免疫異常抑制、マウスで確認 潰瘍性大腸炎の治療法へ期待--東大チーム
マウスの腸内に共生するある種の細菌が、免疫機能の異常を抑える細胞の数を増やすことを、東京大の本田賢也准教授(免疫学)らが突き止めた。免疫異常が原因の一つと考えられている潰瘍性大腸炎やクローン病の治療法につながる成果で、23日付の米科学誌サイエンス電子版に掲載された。【斎藤広子】
潰瘍性大腸炎とクローン病は、腸の粘膜に潰瘍ができる難病で、免疫機能の異常が関与していると考えられている。国内の患者数は潰瘍性大腸炎が約10万5000人、クローン病は約3万人。根本的な治療法はない。
本田准教授らは、無菌環境で飼育したマウスの大腸では、免疫異常を抑えるT細胞の一種「Treg細胞」の数が通常のマウスの約3割しかないことを見つけた。無菌環境マウスにさまざまな腸内細菌を接種し調べたところ、クロストリジウム属の細菌を接種した場合に、通常マウスと同程度までこの細胞が増えた。クロストリジウム属の腸内細菌が多いマウスはこの細胞が多く、炎症性腸炎に抵抗性があることも分かった。
クロストリジウム属の細菌は、ボツリヌス菌など有害なものもあるが、無害なものは人間の腸内に多数共生している。
人間の場合も、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者は健康な人に比べ、クロストリジウム属の腸内細菌が大幅に少ないという報告がある。本田准教授は「細菌のどの分子が免疫異常を抑える細胞を増加させるのか、詳しいメカニズムを解明し、治療薬の開発につなげたい」と話している。
悪環境で細菌の変異多発
多様性を保つ仕組みか
2010年12月24日 提供:共同通信社
大腸菌を通常より厳しい環境で増やし続けると、突然変異が多発するように菌が変化することを大阪大と東邦大(千葉県)、弘前大(青森県)のチームが23日までに突き止めた。523日をかけ、7560世代にわたる培養実験をした結果。
チームによると、この変化で、予期せぬ環境の異変に菌が対応しやすくなるという。四方哲也(よも・てつや)大阪大教授は「生物が多様性を保つ仕組みが働いたのだろう」としている。
チームは37度が増殖に最適な大腸菌を41度で培養。いったん増殖速度が落ちるが、環境に適応する突然変異が起き、盛んに増えるようになった。この大腸菌を43度、45度で培養しても、同じような経過で適応した。
各温度で培養した大腸菌のゲノム(全遺伝情報)の配列を調べると、45度で長期培養した菌では突然変異の発生速度が約10倍になっており、熱に適応するような突然変異だけでなく、適応や生存には関係しない突然変異が大幅に増えたことも分かった。
チームによると、病院での院内感染が問題となる多剤耐性菌の発生過程でも、抗菌薬にさらされるという悪環境に置かれる中で、突然変異が多発する変化が起きた可能性があるという。成果は米科学誌に掲載された。
※科学誌はプロス・ジェネティクス