アク抜き 最低限に
抗酸化成分を保つ


冬はゴボウがおいしい季節。キンピラ、豚汁、煮物に柳川鍋――。「皮をむいたり、水にさらす下処理が面倒と思う人も多いだろうが、実はこの処理なしで調理した方がおいしく、栄養価も高くなるという。

料理本のレシピを見るとたいてい「ゴボウは切ったら、水や酢にさらす」と書いてある。これはアクを抜くのと、色よく仕上げるためというが、実は多くの場合、ゴボウを水にさらす必要はない。

ゴボウを水にさらしたときに出てくる茶褐色の成分には、ポリフェノールの一種「クロロゲン酸」が含まれている。クロロゲン酸は、抗酸化力が強く、血液をサラサラにして生活習慣病を予防するほか、美白効果や抗がん作用が期待されている。

クロロゲン酸は「特に皮下2−3ミリまでに多い。ゴボウ独特の香りの成分も皮の近くに集中している」と、ゴボウの機能性に詳しい北海道立北見農業試験場畑作園芸科の西田忠志科長。

だからゴボウを調理するときは「泥だけを洗い落とし皮はむかない」か、「包丁の背やアルミホイルなどで、表面をごく薄くこそげ取る」程度にとどめ、香りが飛ばないうちに切って、すぐ調理するとおいしい。

土臭かったり、アクが強いのでは?との心配はご無用。「日経ヘルス」では、水にさらしたゴボウとさらしていないゴボウで作ったキンピラを、10人が食べ比べる実験を行った。その結果、なんと10人全員が「水でさらさない方がおいしい」と答えた。

水にさらさなかった方では「ゴボウの香りがする」「味がしっかりしていてうまみがある」、さらした方では「ゴボウの味が抜けている感じ」「筋張った感じがする」との感想が聞かれた。キンピラゴボウはしょうゆで味付けするため、見た目も差はない。

ただし切ってすぐに切り口が黒くなるようなら、アクが強すぎ、えぐみを感じるかもしれない。そんなときは「5−10秒だけ水にさらし、すぐにザルに上げるといい。風味を逃がさずにアク抜きができる」と、菜懐石仙(東京都世田谷区)のオーナーで、長年野菜料理を研究してきたカノウユミコさん。

ゴボウがおいしく味わえる新常識をもう1つ紹介しよう。キンピラゴボウといえばマッチ棒状の千切り、豚汁や柳川には細かいささがき――と思い込んでいないだろうか。実は大きめカットでも意外とすぐに火は通る。しかも「かみ応えもあって、ゴボウ本来のおいしさが味わえる」と和洋女子大学家政学部の柳沢幸江助教授。

細かく切る手間が減るだけでなく、キンピラゴボウを例にとると、しょうゆが付く面積を減らせるため減塩になる。「表面にしっかりと味がつけば、中まで調味料が染み込んでいなくてもおいしい」(柳沢助教授)。

ゴボウの選び方にもコツがある。スーパーや青果店には一般に、収穫時の泥が付いたままの「泥付きゴボウ」、外側を洗った「洗いゴボウ」、細かく切った「カットゴボウ」の3種類が売られている。

味や香りがよく、有効成分のクロロゲン酸を豊富に含むのは泥付きゴボウだ。全体に張りがあってみずみずしく、端をもったときだらりと曲がらないものを選びたい。泥を洗い落とすのがめんどうかもしれないが、保存が利くという利点もある。

「洗いゴボウ」の場合、泥でシンクやまな板が汚れる心配はないが、洗浄時の摩擦で、表面から香り成分やクロロゲン酸が多少失われていると考えられる。

「カットゴボウ」は、香りやクロロゲン酸の量では泥付き、洗いに劣るが、真空パックになっているものは日持ちがいい。買い置きに便利だ。

ゴボウは、お通じを良くする食物繊維やオリゴ糖の含有量が野菜の中でもトップクラス。血流をよくして体を温めるゴボウで、冬を元気に乗りきろう。
(日経ヘルス編集部)


ゴボウ調理の3大新常識

1 皮はむかない
泥をよく洗いおとすか、皮の表面をごく薄くこそげ取るだけに
2 水にさらさず、すぐ調理
さらすと香り成分や抗酸化成分が水に溶け出してしまう。切ってから時間がたつと香りが抜ける
3 大きめにゴロンと切る
筒切りを縦に2〜4等分、大きめのささがきなどでも火の通りは早く、歯応えがいい。調味料がからむ面積が減って減塩に




2005.11.26 日本経済新聞