乳酸菌:ガセリ菌で子宮内膜症を治療  
ビフィズス菌でC肝ワクチン




ガセリ菌で子宮内膜症を治療
NK細胞の活性化で病変が縮小

 明治は、自社保有する乳酸菌ラクトバチルス ガセリ菌「OLL2809株」が、子宮内膜症の予防と治療効果を示すことを確認した。モデル動物を用いて、病変組織の増殖が抑制された。自然免疫を司るナチュラルキラー(NK)細胞の活性化を介して、こうした効果が得られることがわかった。同社では予防医学の観点から乳酸菌による機能性をさらに追求し、エビデンスを積み重ねていく。

 今回の研究によれば、子宮内膜症を発症したマウスに、OLL2809株を21日間投与し、飲用水だけの群と比較し、その予防効果を調べた。試験後、患部の組織を解析すると、飲用水群では子宮内膜組織が腹腔内に増殖し、病状が進行したのに対し、同乳酸菌株を投与した群は病変が有意に抑制されることを確認できた。また腹腔内の細胞の遺伝子解析を進めたところ、NK細胞の活性力が効果にかかわることを見いだした。同乳酸菌投与群では、飲用群に比べ、NK細胞の活性化の指標となるNCR1遺伝子の発現低下を抑制するデータが得られた。

 また病態モデルラットを用いた試験では、治療効果を確認した。同ラットにOLL2809株を28日間投与し、マウス同様に飲用水群と比較。病変の縮小量を測定すると、同乳酸菌投与群では、飲用群の約2倍、病変が縮小した。

 子宮内膜症は子宮外に子宮内膜やそれに似た組織が形成される疾患。20〜30代の女性で発症することが報告され、日本に約13万人の患者がいる。その発症例は年々増加しているといわれている。

 成果は21日まで仙台市で開かれた「第87回日本薬理学会」で、研究の詳細が報告された。

ビフィズス菌でC肝ワクチン、
神戸大 経口投与でHCVに対する細胞性免疫を誘導

 神戸大学大学院医学研究科の堀田博教授の研究グループは、ヒトに対し有益な微生物であるプロバイオティクスを応用し、C型肝炎治療の候補となり得る経口ワクチンの開発に成功した。ビフィズス菌に遺伝子組み換え技術を用いて作製した。マウスに対する試験では、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する免疫力が高まることを確認できた。標準治療法と併用する薬剤への用途化を目指し、森下仁丹やインドネシアの企業と連携し前臨床試験を実施する予定。

 開発した経口ワクチン候補は、HCVの抗原性の強いNS3たん白質の一部が菌体表層に発現するビフィズス菌を遺伝子組み換え技術によって作製。このビフィズス菌では、細胞性免疫を誘導させることを目的とし、免疫を司るT細胞が認識するように、NS3たん白質のCD4とCD8の抗原決定基(エピトープ)を融合たん白質として菌体表層に発現できるように工夫した。

 マウスに対し経口投与すると、HCVに対する細胞性免疫が誘導されることを確認している。しかも加熱殺菌しても、HCVに特異的な細胞性免疫が誘導されることもわかった。また細胞性免疫応答の指標となるインターフェロンγやインターロイキン12の産生が有意に増加する知見も得ている。

 研究グループによれば、ビフィズス菌などの有用微生物はヨーグルトなどの健康に良い食品に使われ、安全性が高い。病原微生物に対し、全般的に抵抗力を高める効果が数多く報告されていることからプロバイオティクスに着目し、研究を行い、今回の成果が得られた。生産についても大量生産が可能で、安価に供給することが可能としている。

 C型肝炎の治療には、ペグインターフェロンと抗ウイルス剤リバビリンの併用療法、またはNS3プロテアーゼ阻害剤を加えた3剤併用療法が標準治療として行われている。日本に多いHCVのジェノタイプ1bの感染では、前者が約50%、後者が約30%の患者が治療に成功しておらず、より有効な治療法の開発が求められている。そこで、開発したビフィズス菌は、標準治療法の治癒力を向上させることに主眼を置き、これらとの併用による治療薬への実用化を目指していく考えだ。

 また森下仁丹の腸溶性シームレスカプセル技術と組み合わせ、経口ワクチンとしての可能性と効果、利便性など検討する。

2014年3月24日(月) 提供:化学工業日報