オメガ3:血清TG値を1割下げる油脂
ナンキョクオキアミが原料の「クリルオイル」




オメガ3:血清TG値を1割下げる油脂
ナンキョクオキアミが原料の「クリルオイル」

 ノルウェーの海洋バイオ企業アーカー・バイオマリン・アンタークティックは、ナンキョクオキアミが原料のクリルオイルの健康機能を突き止める目的で、300人に及ぶ大規模臨床試験を実施し、血清中のトリグリセリド(TG)値が10・2%も低下することを確認した。またTG値低下作用の報告されている魚油では、悪玉(LDL)コレステロール値の上昇する場合があるが、クリルオイル摂取グループでこの上昇を示す所見はなかった。今回の検証データを踏まえ、研究チームはさらに研究を重ね、質の高い科学的エビデンスを得て、心血管系疾患のリスク因子の低減につながる可能性を追求していく。

 今回の臨床試験によれば、了承を得た血清TG値が「境界高値」「高値」1デシリットル当たり150〜499ミリグラムに該当する被験者300人に協力してもらい、1日当たり0・5、1、2、4グラムのクリルオイルを、また疑似薬(プラセボ)としてオリーブオイルを摂取する5グループに分け、12週間にわたり試験を実施した。試験開始時、摂取後6週目、12週目にそれぞれ血中脂質量を測定し、評価を行った。同社のチェトル・バーグ研究開発担当ディレクターが研究の指揮を執った。

 クリルオイルを摂取したグループでは、血清中TG値が、オリーブオイル摂取グループと比較すると、いずれも統計データに基づき、有意な減少が確認できた。最大で10・2%低下することがわかった。

 「EPAとDHAが知られるω3系脂肪酸は、米国などで1日平均摂取量400ミリグラムが必要とされ、これを満たしていない。クリルオイルにより血清TG濃度が約10%低下したことは注目に値する」と、HSω3を指標とする血液検査の考案者の一人で米サウスダコタ大学医学部教授で、同社の科学諮問員委員会のメンバーであるウィリアム・ハリス博士は述べている。

 また今回の試験結果により、クリルオイルの摂取量が最も多い1日当たり4グラムの摂取グループは、血中のω3指標が70%も上昇したことがわかった。突然死につながる心疾患のリスクに対し、有効である可能性が示唆されたとしている。

 研究成果は、栄養科学で国際的に権威のある学術誌「ニュートリション リサーチ」に掲載された。

2014年3月13日(木) 提供:化学工業日報