京料理の神髄は水にあり

日本料理の源流は京料理。その源泉は精進料理ではないかと国立民族博物館の熊倉功夫名誉教授は述べている。それが影響してか京都の平均寿命が東京よりもやや高い。794年の平安京遷都以来、京都は、千有余年の歴史を有する。

そして奈良、平安時代には当時先進国であった中国との交流が僧侶などによって頻繁になされ、その間、中国の食文化が日本にもたらされた。

そのためか京都には神社仏閣が多く、そこで食されていたのは精進料理である。そこで京料理というと野菜料理や大豆およびその加工品である豆腐、ゆば、麩料理などが多くみられる。

動物性食品では淡水産の鮎など、海が遠いので海産物としては、主ににしんなどの乾物や塩蔵物が利用され、おばんざい(京都の日常のおかず)などの味付けは、淡泊で繊細であるのが特徴。

それに大きく貢献しているのは、京都で得られる清らかで美味しい水だ。これはミネラルの含有量が少ないので軟水と呼ばれている。

料理の美味しさは、だしやスープによって決まるといわれる。日本料理では、こんぶやかつおぶしを用いて、だしをとる。このさい、だしの素材のもっとも美味な部分と香りを引き出すのには、日本の水の大部分を示す軟水が絶対必要だという。

一方、中国やヨーロッパなどでは、ミネラルを多く含む硬水の地域が多いので、日本独特のだしを作ることが難しい。そこで肉類や野菜類を使ったスープが発達した。本格的日本料理を作るためには、自国の水をもっと重要視し大切にすべきである。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.10.13記事提供:日経新聞