万能でない野菜・果物

がん予防、疑問符も

野菜と果物は、10年ほど前までがん予防の万能薬のように考えられてきた。しかし最近この傾向が後退気味だ。

野菜の予防効果について1997年の世界がん研究基金報告書では、口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)・食道・肺・胃・大腸のがんが「確実」、咽頭・膵臓(すいぞう)・乳房・膀胱(ぼうこう)のがんが「おそらく確実:の判定だった。しかし2007年の同基金報告書では「確実」の判定はなくなり、口腔・喉頭・咽頭・食道・胃のがんが「おそらく確実」と判定されるにとどまった。

果物の予防効果については97年時は、口腔・咽頭・食道・肺・胃のがんが「確実」、喉頭・膵臓・乳房・膀胱のがんが「おそらく確実」の判定だった。しかし07年には、野菜同様「確実」の判定はなくなり、口腔・喉頭・咽頭・食道・胃のがんが「おそらく確実」と判定されるにとどまった。

特に変わったのは乳がん。97年は野菜も果物も「おそらく確実」の判定だったが、07年にはどちらの判定も取り消されてしまった。こうした変化の背景には、調査方法の進歩がある。

以前は、がん患者に過去の食生活を思い出してもらう研究が多かった。最近は、健康な集団の食生活を事前に調べ、その後のがん発症を追跡調査で確認する研究が増えた。新しい研究で、野菜と果物の効用が再確認されるのではなく、むしろ否定されたり限定されたりする傾向が生じているわけだ。

むろん今でも、野菜と果物がいくつものがんの予防に有用なことに変わりはない。世界がん研究基金も、野菜と果物を合わせて1日400グラム以上食べることを勧めている。がん以外の糖尿病・心臓病・脳卒中等の予防にも、野菜と果物は有用だ。

とはいえ、がん予防の手段として、野菜と果物を万能視するような傾向が弱まっているのも確か。1つ2つの要因だけに注意すれば万全とはいかないようだ。食事・運動・肥満・喫煙など、幅広く目配りすることが大切だろう。
(東北大学公共政策大学院教授  坪野 吉孝)

 

2008.3.16記事提供:日経新聞