今年こそ! 水虫治そう

初期なら 根気よく塗り薬
慢性なら 飲み薬服用

水虫がかゆくなる季節がやってきた。素足になる機会が多い日本人は感染しやすい。年齢とともに患者が増え、60代では男性のほぼ半分、女性の約3割がかかっている。治らないものと思っている人が多いが、そんなことはない。きちんと治療すれば、8割以上は完治するという。

都内在住の松田宗能さん(56)は、20代のころから水虫に悩まされてきた。初めは足指の裏に水ぶくれができ、じきに全体に広がった。夏はジュクジュクしてかゆく、冬はひび割れて血がにじむ。ツメは白く変色し、先がぼろぼろになった。

飲み合わせ注意

皮膚科で塗り薬をもらったり、酢につけるなどの民間療法も試したが、一時的に軽くなるだけ。だが、昨夏、知人の勧めで専門医を訪ね、薬を服用したところ、30年以上続いた水虫が治った。「こんなに違うものかと思った」と、軽くなった足に声を弾ませる。

水虫の原因となる白癬(はくせん)菌は、患者が素足で踏んだ所に残り、そこを踏んだ人にうつる。病院のスリッパや、浴室の足ふきマット、更衣室の床、家の畳など、複数の人が素足で触れるものが多く、感染の機会はいくらでもある。

皮膚が乾燥していれば、菌がついてもなかなか入れない。靴を履くと足の湿度がぐんと上がり、
約24時間で菌が皮膚に入り込む。

最初は指の間がふやけてむけたり、水ぶくれができたりする。この段階なら、根気よく市販薬をつければ1−3カ月で治る。放っておくと皮膚が厚くガサガサになったり、ツメに菌が入って白く濁り、厚くなったり崩れたりする。何年も水虫とつきあっている人の多くはこの状態になっている。塗り薬では治らず、飲み薬が必要になる。

よく使われる「イトリゾール」(商品名)は、1週間飲んで3週間休みという服用法を、3回繰り返す。服薬期間は短いが、スケジュールはきちんと管理する必要がある。飲み合わせがよくない薬が複数あるので、持病がある人は医師に相談する。

もう1つの「ラミシール」(同)は毎日、6カ月間飲み続ける。飲み合わせが悪い薬はないが、まれに肝臓に副作用が出るので、定期的な検査が必須だ。

治療にかかる費用は全体でイトリゾールが約3万円、ラミシールが約2万5千円(3割負担の場合)だ。
慢性化した水虫を完治するのは難しく「水虫を治したらノーベル賞」との俗説もあったほどだが、現在の薬は効果が高く、服用期間が終わっても持続する。仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)の仲弥院長は「1年後には、7−8割の人はきれいに治る」と話す。

別の病気も疑う

飲み薬と違って塗り薬は薬局でも購入できるが、落とし穴もある。哲学堂くすのき皮膚科(東京・中野)の楠俊雄院長は「水虫だと思って来る人のうち、3人に1人はしっしんなど別の病気」と指摘する。こうなると当然、水虫薬では治らない。

浅井皮膚科クリニック(横浜市)の浅井俊弥院長は、市販薬は水虫治療の成分以外に「かぶれる可能性がある成分が入っている」と指摘する。昨年、皮膚科医286人に調査したところ、3月から7月で、水虫の市販薬でかぶれたとみられる患者が780人受診していた。かゆみ止めやスッとする成分が原因となるケースが多かった。

「全国では年間約5万7千人にのぼるだろう」と浅井院長。「市販薬はダラダラと使わない。効かなかったり、異常が起きたりしたら、すぐ皮膚科を受診してほしい」という。

水虫はせっかく治っても、油断をするとまた感染・発症することが少なくない。家の床をきれいに掃除して菌を取り除き、1日1回は足を洗ってよく乾かし、1週間に1回薬をつけると、再発予防になるという。   (古田彩)

水虫のタイプと治療


塗り薬で治療
趾(し)間型     指の間の皮膚がふやけ、皮がむける。じゅくじゅくしてかゆい
小水疱(ほう)型  土踏まずや指の付け根付近などに赤っぽい小さな水ぶくれがポツポツできる。
            大変かゆい
(帝京大学 渡辺晋一教授提供)

内服薬で治療
ツメ水虫       ツメが白や黄色の変色し、厚くなったり先がもろくなったりする。かゆみはない
角化型        皮膚の角質が厚く、表面がざらざらになって皮がむける。ひび割れができることも
(哲学堂くすのき皮膚科 楠俊雄院長提供)

水虫の感染・再発を防ぐには…

○1日1回は足を洗い、よく乾かす
○ゴシゴシと強く洗ったり、軽石でこすったりしない
○通気性のよいサンダルなどの履物をはく
○家族に水虫の人がいたら、足ふきマットやスリッパを区別する
○温泉など、大勢が素足になる場所では、足をよくふいてから靴をはく。帰宅後に足を洗う
○床や畳をこまめに掃除する
○再発防止には、1週間に1回薬を塗る

ひとくちガイド
《ホームページ》
◆水虫治療に詳しい医師を探すには、皮膚科医による「水虫ちゃんねる」
http://www.japan-foot-week.gr.jp/

◆水虫治療法の分かりやすい解説は「水虫は1ヶ月で治せる!」(仲弥著、現代書林)

 


2008.6.15提供 日経新聞