禁煙の効果が明らかな症例〈禁煙後11年経過例〉

患者は1937年1月生まれの男性。初診は1978年で、初期の歯周病で来院した。その時はいわゆるプラークコントロールを中心とした治療を行った。その後、約10年間来院がなく1988年12月に再来院した。齲蝕歯はなかったものの、上下顎臼歯部にはプローピングにより出血する箇所が多くみられ、下顎前歯部には多量の歯肉縁上縁下の歯石沈着がみられた。

プラークコントロール指導と徹底的なスケーリングとルート・デブライドメントを行った。同時にタバコの口腔と全身の健康への為害作用について説明したところ、禁煙の協力を得ることができた。それ以後はほぼ半年ごとのメンテナンスに定期的にら来院し、最新の診査ではプロ−ピングによる出血の部位はみられなかった。

彼は20歳頃から1日約20本程度のタバコを51歳頃まで約31年近く吸っていたことになる。1988年来院時の口腔内写真をみると、タールによる臨床歯冠表面の汚染が目立つばかりでなく、歯肉や口蓋粘膜はきわめて不健康な外観を呈している(左上の4枚の上下臼歯部)。

禁煙の効果は、全身的にも口腔という局所にも明瞭にあらわれる。右の4枚の上下臼歯部の口腔内写真を、禁煙開始時の写真と対比していただきたい。とくに口腔内の軟組織の変化には劇的なものがあることを明白に認識できる。

禁煙の効果
1.禁煙後数週間してから、タバコの影響を受けない本来の歯周組織の反応が見られるようになる。
2.禁煙後1年くらい経過すると、綿維性に厚くなってロール状になった歯肉が、本来の解剖学的な形に回復する。
3.メラニン色素沈着の減少(長期間を要する)。
4.全身の健康回復への波及効果。

 
                 
     
       


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