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BP関連の副作用は怖い

独自の顎骨骨密度評価法を開発 BP関連顎骨壊死の発症予防 医科歯科連携で骨粗鬆症治療に取り組む

大規模臨床試験の結果などから、骨粗鬆症治療におけるビスフォスフォネート(BP)系薬剤の有用性はすでに確立している。しかし近年、世界的にBP系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)が報告されていることから、副作用に対する懸念も広がっている。こうした中、早くから骨粗鬆症と歯との関連について研究を進めてきた高石歯科医院(兵庫県姫路市)理事長の高石佳知氏は、顎骨の骨密度評価法を独自に開発し、BRONJの発症予防などに応用している。

BP系薬剤は現在、その高い骨折抑制効果から、骨粗鬆症治療の第1選択薬に位置付けられている。その一方で近年になって、BP系薬剤を投与されている多発性骨髄腫、乳がんに伴う高カルシウム血症、骨粗鬆症などの患者が、抜歯などの歯科処置を受けた後に顎骨壊死を起こすケースが報告されている。
BRONJの発症機序は不明だが、BP系薬剤の骨代謝回転抑制作用と血管新生抑制作用が関連している可能性が示唆されている。世界的な報告を踏まえ、昨年以降、日本の各BP系薬剤の添付文書には顎骨壊死に関する注意が追記された。また、今年に入って日本口腔外科学会が「ビスホスホネート系薬剤と顎骨壊死」という冊子を作成し、医療関係者に注意を促している。
こうした中で、高石氏は顎骨骨密度評価法を独自に考案。世界的にBRONJの診断機器がない中で、同評価法を補助的な診断ツールとして活用することで、BRONJの発症予防に利用できることを学会などで報告している。

独自に顎骨骨密度評価法を考案

高石氏は、顎骨にも骨粗鬆症が存在するのではないかと考え、骨粗鬆症と歯との関連について、1997年から研究を開始した。ただ、従来の歯科用X線写真では顎骨の骨密度を評価することが難しかったことから、研究を進める際に顎骨骨密度評価法の開発が課題となった。
そこで高石氏は、コンピューター技術を応用して、歯のX線写真から簡便に顎骨の骨密度を自動的に評価できるソフトウエアを独自に開発した。これは下顎骨のX線撮影画像の輝度値を同一条件下に補正し、顎骨特に歯槽骨の経時的な骨密度評価を可能にしたもの。
評価する部分は、全身の骨密度と相関すると考えられる下顎第1小臼歯周辺。このソフトウエアを使えば、わずか数分の処理で、パソコン上に第1小臼歯根尖部周辺の歯槽骨骨密度を、数値とヒストグラムで表示できるという。

明らかになってきた骨粗鬆症と歯との関連

同評価法を用いた検討によって、BP系薬剤を投与すると歯槽骨の骨密度も増加することが確かめられている。高石氏はこうした評価報告を、国内の学会だけでなく、米国骨代謝学会でも発表し、顎骨骨密度評価と全身骨密度との関連を明らかにしている。
同評価法を用いたBRONJ患者での検討では、歯槽骨骨密度は若年者平均値に比べて著しい異常値を示した。このため、BP系薬剤を服用している患者に定期的に顎骨骨密度評価を行っていれば、異常値が発見された場合、医科と歯科が連携して早期に対応することで、顎骨壊死を防ぐことができるという。
こうした研究結果を踏まえ、高石氏は医科とも連携しながら、自ら開発したソフトウエアを使った顎骨骨密度評価法をBRONJの発症予防にも活用している。ソフトウエアは、すでに「Bone Right」として市販されており、導入施設の拡大とともに、同評価法を使った医科・歯科連携も進み始めているそうだ。
今後の展望について高石氏は、「あくまで補助的な診断ツールだが、顎骨骨密度評価は、骨粗鬆症の簡易診断だけでなく、BRONJの発症予防にも利用できる」と強調。BRONJに注目が集まる中で医療現場に混乱が広がっているが、骨粗鬆症治療におけるBP系薬剤の有用性は明らかであるとして、「すばらしい薬剤であることは間違いない。BP系薬剤の使用について間違った解釈をされないためにも、医科と歯科が連携して骨粗鬆症患者さんが適切な治療を受けられるような体制を構築していく必要がある」と話している。


2008.11.10 記事Japan Medicine 提供 じほう