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原因不明の痛みに

難治性疼痛に抗うつ薬有効 福岡大と九州大が確認

異常な痛みが続く慢性の病気で、治療法がなかった「神経因性疼痛(とうつう)」に、既存の抗うつ薬が有効であることが、美根和典(みね・かずのり)福岡大教授(心身医学)や井上和秀(いのうえ・かずひで)九州大教授(神経薬理学)らの研究で明らかになった。

神経因性疼痛は痛みの直接の原因がなくなった後も激痛が続き、患者数は世界で約1500万人。開発に時間もお金もかかる新薬ではなく、既存の薬による治療に道を開く成果として注目される。

治療効果が確認された抗うつ薬は「パロキセチン」(商品名パキシル)。神経細胞から放出された神経伝達物質セロトニンが再び細胞に吸収されるのを妨げる「SSRI」というタイプの薬だ。

神経因性疼痛の発症メカニズムは長年の謎だったが、井上教授は2003年、脊髄(せきずい)にあるミクログリアという細胞の表面で情報伝達にかかわるタンパク質「P2X4」が、発症に関与していることを明らかにした。

P2X4の働きを抑える薬を探し、パロキセチンの効果を発見。神経因性疼痛の状態にしたラットに投与すると痛みが大幅に軽減することを確かめた。

美根教授らの研究チームは、井上教授らの研究とは別に2000年以降、神経因性疼痛の患者にパロキセチンによる治療を実施してきた。これまでに患者33人のうち約8割で痛みが軽減した。SSRIに属する抗うつ薬でもパロキセチン以外は効果はなかった。

美根教授は「パロキセチンは立ちくらみなどの副作用がないので高齢者にも使いやすい。すべての患者に効くわけではなく、どのような患者に有効なのかを調べる必要がある」と話している。

▽神経因性疼痛

神経因性疼痛(とうつう) 事故や手術、帯状疱疹(ほうしん)などにより痛みを伝える神経が傷つくことで、痛みの直接の原因がなくなった後も激痛が続く病気。主な症状には、やけるような痛みが続く「持続性疼痛」や、エアコンの風など軽い刺激で痛みを感じる「アロディニア」がある。鎮痛剤やモルヒネも効かない難治性だが、長い年月を経て自然に治ることもある。

2008.2.19 記事提供 共同通信社