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一人よがりの阪大最新レポート

日本の大学のレベルも、この程度です。阪大COEフォーラムの最新発表内容、
WFHPの実践ORCT説明のほうがよほどまし

◇歯周病にも関心を
--口腔分子感染制御学・川端重忠氏

歯肉が腫れる歯肉炎と、骨を含む歯の周りの組織がダメージを受ける歯周炎を合わせて歯周病と呼ぶ。歯と歯茎の間の歯周ポケットで増殖した細菌が刺激物質を出し、歯を支える歯槽骨が溶ける。ひどくなると歯槽骨がほとんどなくなり、歯がぐらぐらする。最悪の場合、歯を抜かなくてはならなくなる。

日本の成人の80%以上が歯周病を抱えるが、治療を受けているのは5%程度と低い。米国では30-40%と言われる。もっと関心を持ってほしい。

口の微生物は歯周病を起こすだけではない。96年、重度の歯周病を患う妊婦は早産しやすいと米国で発表された。いろいろな病気が歯周病の影響を受けているのではないかと研究が始まり、血管系や呼吸器の疾患、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、早産との関係はかなり信頼性が高い。

初産の妊婦が重度の歯周病を患っていると、高齢出産や喫煙より早産の危険性はかなり高い。心臓から出る血管の大動脈にできたこぶを調べると、口の細菌が出てくるように、心臓血管系にも影響を及ぼしているらしい。高齢者が睡眠中、細菌を含んだ唾液が気管を通して肺に行き、肺炎を起こすことがある。歯科衛生士が口腔ケアをすると、かなり肺炎を抑えられる。

予防は、歯ブラシなどで歯や舌を磨く。洗口剤を併用すると有用。入れ歯も微生物が繁殖するので掃除が重要だ。たばこは歯周病を非常に悪くする。酒も飲み過ぎると悪化の原因になる。ストレスがかかると免疫力が失せ、やる気も落ちて歯を磨かなくなる。こういった悪いチェーンを少しずつ除いてやれば、歯周病は食い止められる。

◇歯と骨再生へ挑戦--口腔分子免疫制御学・齋藤正寛氏

本格的な高齢社会。高齢者がおいしく食べ、楽しく運動して健康でいるために重要なのが、自分の歯でよくかむこと。よくかむと脳が活発化され、ぼけにくいと言われる。また、いろいろなものが食べられて栄養の偏りがなく、胃腸の働きを助け、体調が良くなる。

歯周病は単に歯だけの問題ではない。身近な例に、肩こりやストレス、歯がすり減る、顔がゆがむ、歯周病独特の口臭がある。肥満の原因にもなる。

するめいかなど硬いものを食べるには、18-28本必要なので、80歳で20本の歯を維持しようという8020(ハチマルニイマル)運動が推奨されている。達成の有無で生活の満足度の違いを調べると、達成している人は、特に旅行やスポーツなど外で人と会う場合で満足度が圧倒的に高く、行動的だと分かる。80歳以上で20本ある人は全体の2割で、10年前の2倍以上。運動の効果が出ているが、いっそうの歯周病治療が必要だ。

一昔前は歯周病になると歯を抜かれたが、現在は歯石や腫れた歯茎を取り除く治療で、進行を止める。しかし、失われた骨や歯を元に戻すことは難しい。我々は、再生医療で効率よく元に戻そうと試みている。

骨の再生のプランは、まず骨を作る骨芽細胞を用い、骨の硬い部分とほぼ同じ成分のハイドロキシアパタイトと混ぜる。すると、骨に近いものができるので、これを移植する。近い将来、臨床応用したい。ネズミの歯の再生は、歯を作る歯胚(しはい)の細胞を培養し成功した。現在、人の細胞でできないか技術開発している。臨床応用には一層の研究開発が必要になる。

◇義歯入れ若々しく--顎口腔機能再建学・池邉一典氏

義歯の専門家として、私が考えるQOL(生活の質)を高める方法を話したい。

米国の初代大統領ジョージ・ワシントンは早くに総義歯になった。その義歯は奥歯がほとんどなく、とてもかめるように見えない。では、なぜ義歯を使ったか。義歯がないと、締まらない顔になる。義歯を入れ、若々しく健康なイメージを作り、威厳のある指導者としてやっていけた。この世に義歯がなければ、歴史は変わっていたかもしれない。

実際の例を示す。61歳の男性は、仕事一筋で歯科治療の時間がなかった。上下の歯が互い違いに残り、歯と歯茎でかんでいる状態だったが、義歯を入れると「今までかめてなかったのがよく分かった。人生、何年も損した気になった」と言った。70歳代後半の男性は、残っていた下の歯は虫歯だらけで、ほとんどの歯を抜いて総義歯を入れた。

総義歯は慣れるのに苦労するが、見た目は入れた途端に大きく変わる。歯を失ってからが長いと歯を支える骨、特に前歯の外側の骨がなくなり、鼻の下が落ちくぼむ。歯がないため上下のあごが近づき、くしゃっとした感じになる。人前に出て、話すのが嫌になるだろう。しかし、義歯を入れると、張りが出てしわも伸び、にこっと歯を見せたくなる。QOLを高める効果がある。

 義歯が合わないからと次々と作る人がいるが、調整が必要だ。入れ歯をしての食事や発声は段々と慣れてくるが、痛みは別で、歯科医に正確に伝えてほしい。義歯は口の中の真菌(カビ)が付きやすく、きちんと清掃してほしい。

◇進む接着剤の利用--口腔分子感染制御学・林美加子氏

転んで前歯を折ったり、かんでいて奥歯が割れて痛い思いをすることがある。これらの歯を救おうという試みを話す。

接着剤に使う最近のプラスチック材料は非常に良い。歯が折れても、分からないように付けられるので、持ってきてほしい。詰め物のかぶせが外れ、根が縦に真っ二つになった場合はほとんど残せなかったが、救う鍵を考えた。口の中で付けるのは難しく、一度歯を抜き、外で接着剤で修復して元に戻す方法だ。

第一のポイントは、抜けた歯は入れ直せるということだ。転んで前歯が抜けた女児がいたが、すぐに抜けた歯を牛乳に浸して来てもらい、戻した。歯と骨の間の歯根膜が生きていれば戻せる。

次のポイントは、歯の接着剤の進化。日本はこの技術で最先端にあり、接着剤の進歩によって、歯の治療が変わった。以前は、たくさん歯を削って外れないようにがっちりとものを入れたが、少しの虫歯なら、ほんの少し削って詰められるようになった。美しいし長持ちする。

一度歯を抜き、接着剤で組み立てて戻す。臨床成績は、治療後1年は9割、3年で7割、5年で6割の成功率。前歯はあまり力がかからないので経過は良いが、奥歯は割れることがある。

奥歯でも歯科用顕微鏡で割れを早期に発見できた場合には、歯を残せる可能性が高い。

歯の根が割れないようにするには、根の神経を取らずに残すことがポイント。歯科の世界は、歯を大事にするため予防処置を十分やり、できるだけ歯を削らずに治療する方向に向かっている


2007.11.1 阪大COEフォーラム