真っ赤なトマトをみると元気の源のような気がする。栄養面からみるとカロテン、ビタミンC、カリウムが比較的多く含まれているくらいだが、実はこの赤みを作る成分リコピンに素晴らしい効果がある。リコピンはカロテンの親戚だが、体内でビタミンAに変換されないため、最近まであまり注目されなかった。

ところが近年リコピンは、カロテンよりも抗酸化作用が2倍くらい強く、動脈硬化やがんを促す活性酸素を消去する働きがあることがわかってきた。

こんな研究結果がある。フィンランド、ドイツ、オランダなどヨーロッパの10都市に住む1387人を対象にリコピン摂取と心筋梗塞(こうそく)の関係を調べてみたところ、脂肪組織中のリコピン濃度の高いグループは、低いグループに比べて心筋梗塞のリスクが半分以下だったという。またイタリアで行われた2879人を対象にした調査だが、トマトの摂取量が増えれば増えるほど、食道がんや胃がん、大腸がんなどの消化器系がんの発生が顕著に減少したという。

トマトは暑い時期が旬で、暑さとともに赤み、味がともに増す。中国ではトマトは体を冷やす働きがあるので、暑気あたり解消の食品としている。甘酸っぱい味が食欲を進めることから、大いに食べて健康つくりにも寄与できる。

中サイズのトマト1個は200グラム前後で、他の野菜に比べてたくさん摂りやすい。生のトマトをスライスし、これに生にんにくや玉ねぎのみじん切り、塩、こしょう、レモン汁、サラダ油少々をかけて摂ると美味。油はリコピンの吸収率をアップする。

(新宿医院院長  新居 裕久)

 2006.9.9 日本経済新聞