漫画「ポパイ」のスタミナ源はほうれんそう。栄養価の高い典型的緑黄色野菜である。なかでもカロテンやビタミンC、Eが多く含まれているため、がんや動脈硬化、老化などを促す活性酸素を消去する働きが期待できる。ほかにも疲れを防ぐビタミンB1やB2、またナトリウムを排出して高血圧を防ぐカリウム、骨を丈夫にするカルシウム、貧血を防ぐ鉄などが豊富だ。

さらに最近注目されているのが、抗酸化物質カロテノイドの一種であるルティン、ゼアキサンチンが多く含まれていることだ。これは目の老化を防ぎ、視力の低下を抑える効果があるとされている。

特に50歳以上の人に発症しやすく、失明の大きな原因になる加齢黄斑変性症を予防する働きがあることが分かってきた。ルティンとゼアキサンチンには抗酸化作用があるので、眼球内に入ってきた紫外線で発生した活性酸素を抑え、また目の網膜やその中心にあって視力を司る黄斑の健康を保つという。

ほうれんそうは1年を通じて手に入るが、旬は冬から春にかけてで、これには夏の物に比べてカロテンが1.6倍以上、ビタミンCは3倍以上も含まれ、軟らかくて味も良い。ところで、ほうれんそうというと鉄が頭に浮かぶ。これは吸収率の悪い非ヘム鉄と呼ばれるものだが、動物性たんぱく質やビタミンCといっしょにとると吸収率が高まる。ゆでたほうれんそうにオイルツナ(缶)を加え、マヨネーズとレモン汁などで調味すると味もよくなり、鉄や脂溶性のカロテンやビタミンEの吸収率もアップし、栄養バランスもとれる。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2006.1.7 日本経済新聞