カルニチンにNASH治療効果
マウス実験ではビタミンEより有効




 岡山大学大学院医歯薬総合研究科の高木章乃夫准教授の研究グループは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対し、機能性食品素材「カルニチン」が有効であるという知見を得た。モデル動物を用いて投与試験を実施したところ、肝がんへの進行にいたる経過を改善することがわかった。NASHは近年、罹患率の増加している疾患だが、有効な治療法がビタミンEしかない。カルニチンはサプリメントとして市場が形成されており、今回の成果から新たな治療への応用の可能性が見いだされたとしている。

 NASHは、アルコールをほとんど摂取しないにもかかわらず、肝臓内に過剰な中性脂肪の蓄積が起こり、肝硬変、肝がんへと進行する疾患のこと。国内では約100万人存在するともいわれ、とくに肥満との関与が指摘されている。

 現在、NASHの標準治療には、抗酸化作用のあるビタミンEが世界的に使用されている。ただ、合併症の増加などの可能性が指摘されることもあり、研究グループは、新たな治療戦略の1つとして細胞内で脂肪酸を燃焼させ、エネルギーを産生する小器官であるミトコンドリアの機能を補助するカルニチンに着目した。

 研究グループは、脂肪性肝炎・肝がんモデルのマウスを用いて、カルニチンを投与。疾患を進展させる過剰な酸化ストレスを抑制するが、生体の維持に必要な酸化ストレスにまであまり影響を及ぼすことなく、その制御に有用である可能性が示唆されたという。

 脂肪性肝炎では、ミトコンドリア機能の低下が疾患の進展に関与していることが確認されている。一方、カルニチンは、アミノ酸の誘導体で長鎖脂肪酸をミトコンドリアに取り込む際に必須の物質。またレボカルニチンが希少用医薬品、胃薬としても使用されている。ミトコンドリアの機能を改善させることが知られ、この機能が発揮された可能性があるとしている。

 カルニチン投与群を、ビタミンE投与群、無投与群と、マウス脂肪肝炎の改善効果として比較したところ、カルニチンの方がビタミンEよりも効果が高いことがわかった。さらに肝がんの発がん抑制効果を調べると、腫瘍数、腫瘍サイズともに、ビタミンEよりも効果があることも確認できたという。

 酸化ストレスは、生体内でウイルス、細菌からの感染防御に役立っているなど、健康維持にある程度必要とされる。研究グループでは、ビタミンEの強力な抗酸化作用がNASHの治療に用いることにより、除去され過ぎてしまうことを懸念。今回、見いだしたカルニチンの効果は、単純な抗酸化剤と異なり、ミトコンドリア機能補助機能により、酸化ストレスを適切にコントロールできる新たな作用機序による可能性があるとしている。成果は米国のオンライン総合科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された。

 

提供:化学工業日報 2014年8月7日(金) 配信

2014年9月10日更新