てんぷらは栄養満点

てんぷらは代表的な日本料理の1つで、魚介や野菜に衣をつけて油で揚げたもの。今あるてんぷらは、徳川家康が江戸に幕府を開いてまもなくの1616年、日本橋に魚河岸ができて新鮮な魚介の入手が容易になり、露店の立ち食いてんぷらが現れたのが始まりという。

この頃のてんぷらは、てん種の味を最高に生かす方法としての材料の吟味、からっとした薄い衣の歯ざわり、油の風味の調和が強調されたようだ。(岡田哲「たべもの起源事典」)

ところで、てんぷらは食べたいがコレステロールが心配とか、糖尿病によくないのではないかとかいわれる。たしかに食材に使われるえび、いかなどにはコレステロールが多い。これに対し姫路工業大学の辻啓介教授は動物実験の結果から、えびやいかの中には血中総コレステロール値を下げるタウリンがより多く含まれているので、その心配はないだろうと述べている。

また糖尿病に対しては、血糖値(ぶどう糖)を上げる大きな原因は、ぶどう糖を作り出す炭水化物(ごはん、麺類、パン、甘いもの、甘い果物など)の摂り過ぎによるもので、たんぱく質や脂肪はまずぶどう糖に変わらないので血糖値を上げる心配はないとされている。

そこで、てんぷらを食べる場合はできるだけ衣(炭水化物)の少ないものを選び、ごはんの量をぐんと減らすようにすれば血糖値が上がりにくくなる。つまり摂取エネルギーよりは食事内容が血糖値に影響するということ。本格的てんぷらは旬の魚介類と野菜を組み合わせて揚げるので、栄養満点の美食である。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2006.5.27記事提供:日経新聞