乳酸の本当の作用

乳酸
乳酸と聞くと、どないしたかて疲労の原因思ってしまいまんねん。そやけどアンタ、実は乳酸は疲労の原因やらなんやらやおまへん。
むしろ逆というてもええ物質や。一時期流行ったクエン酸も、乳酸を減らす効果は期待でけしまへん。
いつのまにか、疲労の原因として悪者となっとった乳酸やけど、そやけどアンタ、その乳酸の実際の効力はちごとったんや。

乳酸新理論
「運動をするっちうことによって生成される乳酸。この乳酸が筋肉に蓄積すると通常は中性に保たれとる筋肉が酸性に傾き、体にとってようへん影響を与えるちうわけや。

この乳酸は激しい運動をするっちうことによって発生し、激しい運動後の筋肉痛はこの乳酸の蓄積の原因のひとつと考えられとりまんねん。」
せやけどダンさん、こらムカシからの理論や。

世界的科学雑誌であるScienceに掲載された新しい理論では、「これまで筋肉の疲労と乳酸とは、同一と考えられてきたが、むしろ逆に乳酸は筋肉疲労を和らげてくれる物質と分かったちうわけや。」と掲載されとりまんねん。

また、やまとの疲労研究グループのリーダーも、ようけの研究をやってきた中で乳酸が疲労の原因物質やいうことは、まるっきし常識に反して間違いやったことが分かってきた、と言わはっとりまんねん。

乳酸のホンマの役目
乳酸は、運動すると一時的に上がり、なんぼかの時間が経つと自ずと下がっていく物質や。
よりどエライ昔は、これが疲労の原因物質名んとちゃうかと言われとったんやが、現在の新理論では乳酸はむしろ疲労を和らげてくれる物質で、エネルギーが足りなころを補ってくれる物質ちう考えを持っとりまんねん。

血中の乳酸は、運動するにしたがい時間を追うごとに増加しそうなもんなんやけど、二時間のあいだ運動を続けると運動前と同じくらいに乳酸値が低下しとったんや。運動開始30分までは乳酸が増加しまんねんけど、30分を過ぎると乳酸値は減ちびっと始めまんねん。

体を動かすために必要なエネルギーの大元は食事からとる炭水化物や。炭水化物は分解されて糖に変わり、更にアセチルCoAといわれるエネルギーを生み出す重要な物質に変身しまっせ。このアセチルCoAはエネルギーを作り出す上でどエライ重要な役割を果たしまっせ。運動やらなんやらに使われるエネルギーは、クエン酸サイクルといわれるサイクルによって作り出されとりまんねん。

大まかに説明すると、クエン酸がいくつかの段階を経て、オキザロ酢酸に変身し、ここにアセチルCoAが来よるとオキザロ酢酸と結合し、新たにクエン酸が作り出されはります。ほんで、サイクルが繰り返されエネルギーを作るちうワケや。このサイクルをクエン酸サイクルまたは、TCA回路、クレブス回路ともええまんねん。

エネルギーを作り出すには、クエン酸サイクルが正常に動かなならへんのやけど、アセチルCoAが必要不可欠なんやし、運動を続けるとアセチルCoAの需要が高まり、続けとるうちに不足してしもてまんねん。アセチルCoAは運動するっちうことによって糖が変身して得ることができまっけど、糖がアセチルCoAに変身するとは別に、糖は乳酸に変身しまっせ。

運動を続けることによってアセチルCoAの供給が止まってまうと、アセチルCoAに変わって乳酸がアセチルCoAの役目を果たしまっせ。乳酸はアセチルCoAに変身し、オキザロ酢酸と結合してクエン酸となってエネルギーを作り出すクエン酸サイクルを維持しまっせ。

運動するっちうことによって乳酸が溜まり初めてまうんは、アセチルCoA不足を補うための準備なんやこれがホンマに。 乳酸は、体を動かすために必要なクエン酸サイクルを維持する
ために必要な成分なんやこれがホンマに。 また、運動30分後に乳酸が減り始めるんは、乳酸がアセチルCoAに変わってクエン酸サイクルに入り始めたためや。

乳酸を利用したトレーニング方法
持久力を必要とする競技のトレーニングでは、LT(Lactate Threshold)と言われる需要と供給のバランスが崩れ、血中乳酸が上昇する時点をLTもとい乳酸性作業閾値付近の運動強度を維持できる強度を得ることが大切や。そうするっちうことによって、競技者やらなんやらが守なあかんオノレのペースを知ることができまんねん。

運動中の乳酸の代謝は生産される一方、除去もいっぺんに行われており、LT付近の運動強度を維持できることは最大の強度なんやけど、その地点を越えると運動の継続が不可能になることはありえしまへん。

持久的競技のトレーニングでは最大下の運動強度を維持して行うためにLT付近の運動強度を維持できるような強度を与えていくことが大切になるんですわ。そうするっちうことによって競技者が守なあかんペースを知ることができまんねん。運動中の乳酸の代謝は産生される一方で除去も行われ、LT付近の運動強度を継続できることは最大の強度やけど、そやけどアンタ、その地点を越えると運動の継続が不可能になることはおまへん。

激しい動きをしすぎてしもて、あとちびっとで動けななるような状態で、試合やレースやらなんやらを終了し、また次の試合やレースが控えとる場合は、蓄積された乳酸をできるだけ早いうちに除去する必要がおます。そないなとき、動かんと安静にしてんと乳酸の除去にようけの時間がかかってしまいまんねんが、逆に軽い運動といえる、クールダウンを行うのがええ方法や。

クールダウンを行うことによって、体に溜まった乳酸を積極的に除去してくれる働きがおます。せやけどダンさん、乳酸を除去するためのクールダウンの強度と時間が問題になるんですわ。強すぎる運動は、更に乳酸を産生するっちうことになり、蓄積された乳酸を酸化できず回復に時間がかかるんや。あんまり弱すぎると安静時と同じなんやし、筋に回る血流が少なくまた筋の活動がちびっとのために除去に時間がかかるんや。

2008.3.16