効果を実証 安全性確認
国が3段階審査


すしを作る時、笹(ささ)の葉がよく使われる。これで巻いたり、上下に敷いたり、しきりに使われたりする。また美しく切って盛り付けることもある。

ところが近年、これを飾りとでも勘違いしたのか、人工的に作った笹の葉を代用している場合が少なくない。実は本物の笹の葉は、日持ちをよくするために用いられている。笹の葉には、揮発性の物質のフィトンチドのほかにサリチル酸が含まれ、これらには抗菌、殺菌作用があるので、生活の知恵として、昔から食中毒予防に使われてきた方法なのである。

また、すしには生ものがつきもの。昔は冷蔵庫がなかったので、細菌の繁殖による食中毒も多かった。そこで対策の1つとして使われたのが薬味だ。わさびにはアリルイソチオシアネートが含まれ、抗菌、殺菌作用がある。ただし、練りわさびよりも、生わさびの方が、この効果が20倍強いという。

また、すしだねとしてアジ、サバ、カツオなどの青背の魚には、薬味としておろししょうががよく合う。この中にはジンゲロン、ショガオールといった成分が、またカツオによく用いられる生にんにくにはアリシンと呼ばれる成分が含まれ、ともに抗菌、殺菌作用がある。

すしには、ガリ(しょうがの甘酢漬け)がつきもの。これも食中毒予防になっているものだ。酢の殺菌作用はよく知られるところで、すしの飯には欠かせない。そして、すしを食べるときは薬味もしっかりとろう。薬味には、芳香、彩り、味わいで食欲を促す働きがあるばかりでなく、消化吸収をも促す。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.6.30 日本経済新聞