コレステロールは低いほどよいと思っている人が多いが、これは大きな誤解であることが分かってきた。桜美林大学大学院の柴田博教授らは、東京都小金井市の70歳の老人を対象に研究を行った。対象者の血中総コレステロール値を低い順に並べ、4つのグループに分けた。

その後10年間の生存率を調べたところ、もっとも生存率の高かったグループは、コレステロール値の高い方から2番目のグループで、その値はというと、男性では血液1デシリットル中に190−219ミリグラム、女性では同220−249ミリグラムの範囲であった。もっとも寿命の短かったグループは、血中総コレステロール値が一番低い、男性では血液1デシリットル中169ミリグラム以下。女性では同194ミリグラムミリグラム以下のグループであった。

近年の疫学的研究によると、血中総コレステロール値が高いと心筋梗塞のような心臓病が増加する。反対に低いと脳出血、がんの死亡率を高め、また感染症が増加するという結果が出ている。また中高年になると、うつ状態が起こりやすくなる。

柴田教授らは、65歳以上の人達を対象に4年間、血中総コレステロール値とうつ状態の関係を調べたところ、血中総コレステロール値が低い人ほどうつ状態になりやすいことを知った。

また高知医科大学の調査によると、高齢者では血中総コレステロール値が1デシリットル中200ミリグラム以下のグループは、それを超えるグループよりも認知能力が低下しやすいという。コレステロール値の低すぎる人は日ごろ肉類や動物性脂肪はむやみに避けることはよくないといえる。

(新宿医院院長  新居 裕久)

 2006.10.14 日本経済新聞