命に関わるのは同じ、ペットのお口から感染する
怖い歯周病菌や虫歯菌も・・・。
ペットのプラークコントロール

【近ごろ都に流行るもの】

  昭和のころなら過保護といわれたかもしれない犬の歯磨きが普及してきた。室内飼いが主流になるとともに寿命が延び、歯周病などの問題が深刻化。ケアも人並みにとの意識が高まっている。大事な愛犬の健康を守ろうと、飼い主は奮闘中だ。(重松明子)


 「なめられて、臭い! 歯周病では…と不安になった。きちんと歯磨きしてあげたい」

  亀戸動物病院(東京都墨田区)が今月から毎週日曜日に始めた犬の歯磨き教室で、6歳のチワワを抱いた男性が参加理由を語る。

  取材日は6人の飼い主が愛犬連れで集まり、「歯ブラシを入れようとしたら怒られた」「おもちゃと勘違いして遊んでしまう」などと町田健吾獣医師(28)に相談していた。

  実技では、口の周りをなでる→指で歯茎をマッサージ→ぬれガーゼで磨く−というウオーミングアップを経て歯ブラシを手にした。「脇を締め、歯周ポケットに合わせて斜め45度で」との指導に合わせて挑戦する飼い主。顔をそむける犬、されるがままの犬…反応はさまざまだ。

  「好きなペットフード缶の汁を使って磨いてもいい。できたらホメ、イヤがったらすぐにやめましょう。犬も人も楽しんで続けられることが大事です。犬は達成の喜びを感じる動物ですから、あせらず慣らしていけばいい」と町田獣医師。犬の口腔(こうくう)内はアルカリ性で虫歯はまれだが、数日で歯垢が歯石化するため歯周病になりやすく、成犬の約8割がかかっているともいわれる。「人間同様に内臓疾患につながる恐れもあり、健康チェックを兼ねて1日1回の歯磨きを勧めます

  町田獣医師は歯科医師の兄の影響で歯科に取り組むようになったそうだが、獣医師界全般では歯科の比重は軽い。「命に直結する分野でないからと大学の教育も手薄で、口腔外科などの治療ができる病院は少ない」と、獣医歯科研究で博士号を持つフジタ動物病院(埼玉県上尾市)院長の藤田桂一獣医師(54)。週末には1日200匹近くが治療にやってくるが、歯科領域が3割と最も多い。

  平成21年、ペット関連業のアニコムパフェが藤田獣医師を講師に「オーラルケア導入セミナー」を開催。参加した139の動物病院では歯磨き教室を実施する所も増えてきた。「飼い主の意識を高めることは、病院経営の安定化にもつながる」と藤田獣医師。

  歯周病は歯が密生する小型犬で重症化しやすく、歯槽骨が溶けて口と鼻が内部でつながったり、あごが折れるケースもあるそうだ。

  「抜歯しても人間ほど支障は出ないので、安心して治療を受けてほしい。犬が元気になるだけでなく、人間も快適になる。健康な犬の口はもともと無臭なんですよ」(藤田獣医師)

  ■売れ筋は「進化した歯磨きガム」

  ペットシティお台場店(東京都江東区)には、歯ブラシや洗口液、歯磨きシートなど50種以上のオーラルケア商品が並んでいる。

  店長代行の山本麻友美さん(25)に売れ筋をたずねると「歯ブラシはややハードルが高いようで、進化した歯磨きガムが人気。歯ブラシを使っているワンちゃんも、磨きにくい奥歯を補完するアイテムになっています」。

  一番人気のマースジャパン「グリニーズ」(1本98〜480円)はガムでありながら歯ブラシ型形状で歯垢を除去。栄養に配慮し、体格別に選べる点もウケている。「多少高くても安心安全を最優先する飼い主が増えている」と山本さん。

  犬のためなら何でもしてあげたい。「そんな愛を自分にも向けて」と思っている人が近くにいたりして…。


201010.24 記事提供:産経新聞