抗凝固アスピリン抵抗性が
日本人の薬1/4に観られる。

アスピリン抵抗性、日本人患者の約1/4に

抗血小板療法中の患者を対象とした検討結果を京都大学・山根啓一郎氏が報告

 アスピリンは心血管疾患の抑制に優れた効果を有しているが、その薬効はすべての患者に均一ではなく、「抵抗性」の存在が指摘されている。また、アスピリン長期投与で抗血小板作用が減弱する可能性も報告されている。そこで、京都大学医学部附属病院循環器内科の山根啓一郎氏は実臨床の場でこのアスピリンに関する2つの問題について検討し、7月15日に発表。約1/4の患者でアスピリン抵抗性が疑われると解説した。

2年間の長期投与で抗血小板作用の減弱は見られず

 今回の検討は、APTEST(Anti-Platelet Therapy Effectiveness Study)試験のデータを用いて行われ、その適格基準は、6カ月以上抗血小板療法を行っており、70歳以上や糖尿病、6カ月以前の心筋梗塞・狭心症・脳梗塞・PCI/CABGの施行などのリスクファクターを1つ以上有している患者。また、81歳以上、6カ月以内の心筋梗塞・狭心症・脳梗塞、ワーファリンによる治療などが除外基準。

 440人の患者がAPTEST試験に組み入れられ、そのうち239人がアスピリン単独療法を受けていた(グループ1)。このグループ1を対象としてアスピリン抵抗性の割合を検討。さらに2年後、転院・死亡などの理由で脱落し、167人で解析が可能だった(グループ2)。このグループ2を対象に、アスピリン長期投与による薬効の変化を検証した。

 血小板凝集能はボーン法を用いて評価。ボーン法はPRP(platelet rich plasma)に凝集惹起剤を添加後、透光度の変化をモニターすることで血小板凝集能を測定する。50%の凝集率を誘導するのに必要な凝集惹起剤の濃度PRP-PATI(platelet aggregation threshold index)値1.0mg/dLをカットオフ値とすると、感度91%、特異度100%で健常ボランティアがアスピリンを内服していないことを検出できると報告されている(Circ J. 2008;72(3):420-6)。

 そこでこのPRP- PATI値1.0mg/dLを指標として、グループ1のアスピリン抵抗性の割合を見ると、27%の患者で1.0mg/dL以下を示した。このアスピリン抵抗性が疑われる患者の背景因子について、糖尿病や脂質プロフィールを含めて多変量解析を行ったところ、女性、カルシウム拮抗薬の服用なし、の2つが有意な関連因子として認められた。

 さらに、グループ2を対象に、最大凝集率およびPRP- PATI値の2年間の変化を検討。その結果、2年間の長期投与でもアスピリンの薬効に減弱は見られないことが示された。

 この結果を踏まえ、山根氏は「日本人を対象とした検討で約1/4の患者にアスピリン抵抗性が疑われた」と解説し、「アスピリンの薬効は少なくとも2年間は持続し、長期投与による効果減弱は認めなかった」と指摘して、演題を終えた。なお、本研究は2010年のCirc Jに掲載された(Circ J. 2010;74(6):1227-35)。



2010.07.21 記事提供:m3.com