よく合った靴はく
指の間も充分乾燥
「気の持ちよう」

炎天下の戸外から帰宅。靴と靴下を脱ぐと、汗まみれの足から嫌なにおいがプーン――。
暑くてじめじめした今の季節はとりわけ、足のにおいが気になるものだ。正しい対処法を身につけよう。

足のにおいの研究・実験もしている北里大学医療衛生学部の田口文章教授(臨床微生物学)の元には、悩みを抱える多くの人から相談が寄せられている。

その中の一人、Aさんは飲み会の席などで靴を脱ぐのが苦痛となり、ついには会社をやめたいとまで思い詰めているという。本人にとっては深刻な問題だ。

ほかにもこんな「足のにおい防止法」が

●良質な天然皮革の靴をはく
皮は通気性がよく、汗を吸収する
●靴に吸湿・消臭効果のある中敷を
活性炭を含んだものがおすすめ
●靴の先に10円玉を入れておく
発生する銅イオンが消臭効果
●薄めた木酢液で毎日足湯
木酢液は炭を作る際に出る液。市販されている。
●足にベビーパウダーをつける
汗を吸いサラサラに

なぜ足から嫌なにおいが出るのか。田口教授は「犯人は細菌」と言う。汗をかいた足は塩分と水分が十分。そこに適度な温度が加わると、細菌にはぴったりの環境になる。ここで皮膚の角質(皮膚の一番外側)がはがれてできた垢(あか)をえさに増殖する。汗はもともと無臭だが、細菌が作るにおい物質が独特のにおいを放つ。

だから、足のにおいを防ぐ第一歩は汗をかかないこと。田口教授は「足にあった靴を選んでみてはどうか」とアドバイスする。合わない靴を履くと足が緊張し、汗をかきやすいからだ。国内初のシューフィッター(靴選びのアドバイザー)、菊地武男さんも「靴がきつくても緩くても足のムレを招く」と指摘する。

ただし足先からの汗をゼロにするのは実は不可能と言ってよい。一般には汗は暑いときにかくものと思いがちだが、手と足の裏はそれだけではない。緊張で「手に汗握る」時には、たいてい足の裏も汗をかいている。

足の汗を防ぐのは難しいが、あきらめるのは早い。乾燥と清潔を心がければにおいはかなり防げる。

まずは足。指の間もしっかり洗い、よく乾燥させる。英国式足裏マッサージサロン「クイーンズウェイ」を運営する日本リフレクソロジー協会(東京・中央)の浜野礼子さんは「ラベンダーやティートリーといった香油を入れた湯で足湯をするとよい」と言う。香りで足のにおいが消せる上、殺菌効果も期待できる。

足の裏の角質を取ることも忘れずに。入浴して皮膚が柔らかくなったときに軽石などで軽くこする。余分な角質が取れ、細菌のえさが減る。

次に、靴の手入れも大切だ。無駄な湿気を飛ばし乾燥を保って細菌の増殖を抑える。たとえば、毎日同じ靴を履かず、1日履いたら3、4日は陰干しする。靴箱は締め切らず、通気性を良くする。
においが気になる場合は、電子レンジで乾燥させた茶殻やコーヒー豆のかすをガーゼに包み、靴に入れる。コーヒーには消臭効果がある。

靴下にも気を配って、こまめに履き替える。特に女性のはくストッキングは汗がこもりやすいので注意する。五味クリニック(東京・新宿)の五味常明院長は絹の靴下を薦める。通気性がよく、湿気を外に逃がす性質があるからだ。

最近は足や靴用の消臭スプレーもたくさん出ており、気づいたときに吹きかければ一時的ににおいを抑えることもできる。

においの撃退もいいが、あまり気に病むと逆効果になりかねない。五味院長は「においを気にするあまり常に緊張感が解けず、さらに汗をかくという悪循環陥る人もいる」と言う。

緊張の汗をかかないために、深呼吸をするなどして気持ちを落ち着かせると同時に、「手入れはしているから、におわないはず」「少しぐらい足がにおっても、大した問題ではない」
というぐらいに、おおらかに考えてみるのがいいのかもしれない。

(2001.7.14 日本経済新聞)