歯とあごの不調和をディスクレパンシーという。人間のあごは縮小傾向にある。そのため、すべての歯があごの上にきちんと生えきれず、歯並びが悪くなる。その現象に拍車をかけるのが、食文化の変化だ。

元東京大学医学部助教授の井上直彦氏によると、ディスクレパンシーは、ケニアで発見された800万年前の人類の祖先の化石や、縄文時代の人骨でも確認されている。20世紀に入ってから歯並びの悪い人は急増し、現代では「10人に7人以上の割合」(井上氏)に達する。

井上氏は「最大の原因はほ乳びん保育」と言う。赤ちゃんが乳房から乳を飲むときには、かみながら飲む。通常のほ乳びんは吸うだけで飲めるから、あごは未発達になる。ほ乳びん保育でも、かまないと出ない構造のビンを利用するなど、乳幼児からのあごの訓練が大切だ。

(2001.5.5 日本経済新聞)