魚、魚、さかな♪

魚は糖尿病患者の腎疾患に有効な可能性
魚を食べると腎疾患の蛋白指標が低下する可能性があることが研究から示されている

Julie Edgar
WebMD Medical News

魚を週に2サービング以上食べると腎疾患も併せ持つ糖尿病患者に保護作用があるとみられることが、英国の成人22,000名以上の長期的研究で示されている。

この研究は米国腎財団(National Kidney Foundation)の公報『American Journal of Kidney Diseases』に発表されたもので、魚の摂取が糖尿病患者における尿中蛋白質の異常濃度を低下させることを示している。

腎が損傷を受けると、尿中に異常な量の蛋白質が認められるようになる。これは腎疾患の重要な指標である。これまでの諸研究において、魚および魚油の摂取には、尿中蛋白質の減少、耐糖能の上昇、血中脂質の減少、血圧の低下という、いずれも糖尿病患者に有益な作用が認められている。

糖尿病は推定2,360万人の米国人が罹患しており、末期腎疾患の主要な原因となっている。この疾患は治療法がないものの、バランスの取れた食事を摂るとともに、定期的な運動ならびに過体重や肥満の人は減量を行う生活習慣を身に付けることは合併症の進行を遅らせるのに有効である。

この英国の研究は、食事と癌の関係を研究した10カ国共同のEuropean Prospective Investigation of Cancer(EPIC)の一環として行われたものである。1993-1997年に実施された同EPIC-Norfolk Studyは、主として中年以上の白人男女22,384名を対象としており、そのうち517名は糖尿病患者であった。

尿検査および食事・生活習慣質問票から、魚を週に平均1サービング未満しか摂取しない糖尿病患者は定期的に魚を食べる糖尿病患者に比べて、マクロアルブミン尿(蛋白質濃度が異常に高い尿)を有する可能性が4倍であるとの知見が得られた。

この研究において、糖尿病のない人たちでは、魚の摂取によって尿中蛋白質濃度に差が認められなかった。

「尿中蛋白質は腎疾患の最も初期の徴候のひとつである」と共同研究者であるAddenbrooke's病院医学研究評議会疫学部門(Medical Research Council Epidemiology Unit)(英国、ケンブリッジ)のAmanda Adler, MD, PhDは述べている。

この研究では、糖尿病のある被験者の平均年齢は64歳、糖尿病のない被験者の平均年齢は58.8歳であった。被験者は全例とも、健康診断を受け、食事日記をつけるとともに、食事頻度質問票に記入をした。研究の開始時と終了時に、被験者の尿を採取して蛋白質濃度を測定した。

魚の消費量とは、魚の揚げ物、脂肪の多い魚、白身魚、フィッシュ・フィンガー(細長く切った魚のフライ)の週平均摂取量と定義した。この研究では、飲酒や喫煙といった生活習慣因子、家族の病歴、社会経済的状況、民族について検討したが、これらの因子はマクロアルブミン尿のリスクに有意な影響を及ぼさないことが認められた。

どの種類の魚に腎の保護作用があるか?

腎を保護するのは魚油か魚に含まれる蛋白質の種類かは明らかではないとAdler博士は述べている。しかも、同研究では、揚げた魚と揚げていない魚、暖流魚(warm-water fish)と寒流魚(cold-water fish)(サバ、サケなど)の区別をしていない。この研究は、魚摂取量を増加すると糖尿病患者の腎機能に保護的作用が認められることを示しているにすぎない。

「この研究では、あらゆる種類の(魚の)調製品を対象とした。しかし、脂肪の多い魚や魚の揚げ物(フィッシュ・アンド・チップスなど)に関してリスクの差は認められなかった。魚の種類間の差を認めるには、もっと大規模な研究を行う必要があった可能性がある」とAdler博士は述べている。

米国腎財団(National Kidney Foundation)の広報担当を務める腎専門医Leslie Spry, MD(ネブラスカ州、リンカーン)は、通常は患者に魚の摂取量を増やすようには言わないが、中性脂肪(血中脂肪)をコントロールするために魚油のサプリメントを推奨している、と述べている。

「これは、食事の勧告につながった初めての研究である」とSpry博士は述べ、魚や魚油の摂取量と尿中蛋白質濃度の低下との関係の解明を試みる広範な糖尿病患者の研究が見たいものだ、と付け加えた。

「次に行われるべき研究は、(糖尿病患者の)集団を取り上げ、患者を魚の多量摂取群と魚の少量摂取群に無作為に割り付け、その両群を比較することである」とSpry博士は述べている。「私は、(被験者が)昔ながらのあらゆる種類の魚料理を食べることができるという、彼らの選択方法にやや強い印象を受けた。この研究は、それをしても良いことを示唆している。私は自分の患者に、ファーストフード店へ行って魚のスティックを食べるように言わないが、この研究ではそれを了承しているように思われる」


2008.11.4 記事提供 WebMD