自殺とアレルギーの関連

アレルギーと自殺傾向との関連の可能性が研究で明らかに

疾患合併の調査データから、喘息および皮膚炎との関連に類似すると思われる相関が認められる Kathryn Foxhall

【5月6日】(ワシントン DC)地域住民を対象にした精神衛生に関する大規模研究の解析において、アレルギーと自殺傾向との関連が示唆された。

研究者らはNational Comorbidity Survey Replication(NCS-R)のデータを用いて、アレルギーと自殺念慮歴、およびアレルギーと自殺企図歴の間に、有意な関連があることを示した。この関連はうつ病について調整した後も有意性を失わなかった。

「これは喘息および皮膚炎と、自殺念慮および自殺企図との間に有意な関連があることを示した以前の研究結果に類似する」と、共著者であるジョージア医科大学(オーガスタ)のStephen Welch, MDをはじめとする研究者らは述べている。

その報告は米国精神医学会第161回年次総会(ワシントン DC)で発表された。

アレルギーと自殺念慮の病歴

米国立精神衛生研究所が資金を提供した本研究は、英語を話す18歳以上の米国内の世帯居住者9882名からなる全国代表標本であるNCS-Rの2001年から2004年までのデータを使用した。

コア診断評価からなる第1部の調査は全回答者を対象として実施され、第2部は第1部の疾患に関する生涯基準を満たした患者と、他の回答者の確率標本を対象として実施された。

年齢、性別、人種、およびうつ病の病歴を含む交絡因子について調整した後、ロジスティック回帰モデルを用いて調整オッズ比と95%信頼区間を計算した。

結果はアレルギーと自殺念慮の病歴の間に有意な正の相関があることを示し、調整オッズ比は1.37(95% CI、1.13 - 1.65)であったと著者らは述べている。うつ病について調整した後のオッズ比は1.27(95% CI、1.04 - 1.54)であった。

自殺企図の病歴との相関はさらに強く、調整オッズ比は1.40(1.07 - 1.84)であり、うつ病について調整した後は1.32(1.003 - 1.74)に低下した。

研究者らは関連についていくつかの種類の仮説を立てたとWelch博士はMedscape Psychiatryに語った。「これは単なる生活の質の問題なのか?性格に関係するものなのか?それとも背後に生化学的基盤が存在するのか?」と博士は述べた。

論文によると、以前の研究で単に性格特性によって一部の人々はうつ病およびアレルギーの両方を報告する可能性が高くなるのかどうか検討したところ、相関は認められなかった。免疫グロブリンE(IgE)レベルの上昇との関連の可能性を検討した研究でも、同様に相関は見出されなかったと、著者らは述べている。

「最も有望な研究は体内のサイトカイン活性の上昇に関するもののように思われる」とWelch博士は述べた。その研究ではうつ病との関係の可能性を調べている。他の研究では自殺者の脳内のサイトカインレベルの上昇が認められている。

今後の研究

Welch博士は学会で報告したアレルギーと自殺傾向の関連について現在、次のように述べている:「それは強い相関ではないため、臨床的意義がそう大きいわけではないだろう。例えば自殺傾向のみられる患者を救急治療室で診察する際にアレルギーのスクリーニングを行う必要があるのか、などとは考えなくて良いと思われる。」。

「うつ病の病歴や過去の自殺企図の病歴のように、有意水準のはるかに高い、より重要なリスクファクターが存在する」と博士は説明した。

しかし、もし研究において、状況に影響を及ぼす可能性のある変数の数を制限するために、例えば性別、年齢、人種および既往歴が同じ群のような均質集団を調査することが可能であれば、「何が起きているのかについてもっと多くの洞察を得ることができ、どうすればこれを効果的に治療できるかについて取り組む手始めになるだろうと期待される」。

今後の研究で検討すべき問題には、喘息を含む他の疾患についてデータを調整した場合に、関連が有意性を失わないかどうかが含まれると、Welch博士は述べた。

さらに、症状の重症度を追跡調査する経時的研究によって更なる支持が得られる可能性があると博士は述べた。「もしアレルギー症状が増大するにつれて自殺念慮の強さや自殺企図の回数が増大するなら、アレルギーが自殺傾向を引き起こすという証拠になるだろう」と、Welch博士は付け加えた。

ある研究では樹木の花粉の飛散ピークがある種の自殺企図と相関することが実際に認められていることに博士は言及した。もし自殺企図が喘息およびアレルギー症状の治療に伴って減少するなら、「今回の知見をさらに支持するものになるだろう」と博士は付け加えた。

博士のグループの今後の研究では喘息および他のいくつかの第I軸の障害について調整した上でデータを検討することになるだろうと、博士は述べた。

本研究は米国立精神衛生研究所による支援を受けた。


2008.5.6 記事提供 Medscape