食べて花粉症を予防

ビアィズス菌・乳酸菌効果的
シソ・タマネギ・ダイコンなども

花粉症の人にとって憂鬱な季節がやってきた。治療は薬でするものだが、食習慣の改善が予防や症状緩和に役立つことがあるという。積極的にとりたい食材は−−。

腸内細菌学者で理化学研究所バイオリソースセンター室長の辨野(べんの)義己さんは、八年前から大嫌いなヨーグルトを食べ始めた。マスクなしでは耐えられないほど、ひどい花粉症だったのに、食べて一年後に症状が改善。「五、六年前からマスクがいらなくなった」という。

花粉症は花粉によって引き起こされるアレルギー症状だ。人間は異物が入ると、それを排除しようと免疫反応を示すが、花粉を異物と判断して過剰に反応することで鼻水や目のかゆみといった症状があらわれる。だから、ポイントの一つは免疫担当細胞の過剰反応を抑えること。2004年と2005年の辨野さんの実験によると、その過剰反応の抑制に、ビフィズス菌の摂取が効果的だったという。

辨野さんによると、人間の免疫担当細胞の60%が小腸にある。一方、大腸には多様な腸内細菌があり、さまざまな病気の原因になっている。

「からだ全体の免疫機能と腸内環境の関係は深いといえる。腸内環境を整えれば、免疫機能もある程度正常にコントロールできるはず」と辨野さんは考える。

腸内環境を整えるものといえば、乳酸菌、ビフィズス菌、オリゴ糖、食物繊維など。辨野さんは野菜もたくさん食べ、ウオーキングをして体質改善に成功した。「ヨーグルトは毎日200グラムは食べてほしい。ただ、ヨーグルトを食べればいいというわけでなく、野菜も必要。便通のよくない人は花粉症になりやすいので特に注意してほしい」

横浜薬科大学客員教授で漢方の治療に詳しい根本幸夫さんは「甘いものや辛いものが花粉症の症状を重くする」と強調する。「(季節の変わり目である)春先は首から上がのぼせて血がたまりやくす、ノドや鼻、目の粘膜が充血する。刺激物はその充血した粘膜の炎症を助長する」からだ。チョコレート、ケーキ、とうがらし、わさび、からしのとりずきは要注意という。

甘い物をどうしても食べたいという人は「果物や焼き芋など自然のものにしましょう」と根本さん。症状の緩和を期待できる食材には何があるのか。根本さんによると、炎症を和らげ、目の充血などに効果的なのがシソの葉、クコの実、アサリ、シジミ、セロリ、セリなど。発汗を促すクズ、シナモン、長ネギ、ショウガもおすすめ。

ホテルモントレ横浜の「随縁亭」料理長、松崎英司さんは和食薬膳のメニューを提供している。花粉症の症状緩和につながる食材を使い、手軽にできるメニューを松崎さんに教えてもらった。「アサリの酒蒸し」は汁までおいしく飲むことができる。「クズのおかゆ」はカボチャの黄色とクコの実の赤色がきいて見栄えも鮮やか。「春先は上半身ののぼせに加えて下半身の冷えもある。両方にいいようにと考えた」と松崎さん。

花粉症治療の専門家で福井大学医学部耳鼻咽喉科教授の藤枝重治さんも、「食習慣は大事。花粉症とも関係があると私は考えている」と語る。推奨できるのが、抗酸化作用のあるビタミンA.C.Eやポリフェノール。フラボノイドを含むもの。ポリフェノールを含有するものとしてシソ・タマネギ・ショウガ・ダイコン・玄米・ソバなどがあげられる。

また、脂肪のとりすぎもアレルギー症状を促進するとされるので、「肉よりも魚がいい。煮物など伝統的な日本食がおすすめ」と藤枝さん。ただ、食事に即効性はない。薬に頼らざるを得ないことも多いが「小さい子どもの親御さん気をつけてほしい。まだアレルギーのない子が、将来もアレルギーを出ないようにするためには、食習慣が一つのカギになると思う」と藤枝さんは指摘する。

手軽にできる花粉症予防メニュー
アサリの酒蒸し
アサリの酒蒸し

材料・2人分
殻つきアサリ200グラム(20個)、セリ5本(10グラム)、セロリ4センチ(20グラム)、ショウガ3グラム、料理酒大さじ3、薄口しょうゆ小さじ1

作り方
1.アサリの殻をよく洗って鍋に入れ、水150cc、料理酒、薄口しょうゆ、刻んだショウガとセロリを入れて強火にかける
2.アサリの殻があいたらアクをよくすくい、刻んだセリを入れて強火にかける
クズのおかゆ
クズのおかゆ
材料・2人分
玄米大さじ3、ハトムギ小さじ2、シソの葉2枚、カボチャ20グラム、クコの実10粒、本クズ小さじ1、コンソメキューブ1個(4グラム)
作り方
1.玄米、ハトムギをといで、一晩450Ccの水につける
2.鍋に1を入れ、コンソメキューブを加えて強火にかける。沸騰したらフタをして弱火で30分炊く。
3.クコの実、7ミリ角に切ったナンキンを入れ、さらに5分炊く。
4.炊き上がったら強火にして大さじ1の水で溶いた本クズを入れ、ダマにならないようにかきまぜる。
5.茶わんに盛り、千切りにしたシソの葉をのせる。

(レシピの作成はホテルモントレ横浜、隋縁亭の松崎英司料理長)

 

2008.2.16記事提供 日本経済新聞