手洗い、マスクがウイルス性呼吸器感染の
蔓延防止に有効な可能性

[WFで薦めてるクロルヘキシジン(ラカルト)のオーラルケアもウイルス疾患には効果的です。]

手洗い、マスクの着用といった物理的バリアは、長期、日常的に実行すれば、わずかの費用でウイルス性呼吸器感染症を減少させる可能性がある。
Laurie Barclay

手洗い、マスクの着用といった物理的バリアがウイルス性呼吸器感染症の蔓延防止に有効であるというコクランレビューの結果が、『BMJ』11月28日号オンライン版に掲載された。

「最近の臨床試験で、手洗いが発展途上国における肺炎発生率の減少に有効であるということが判明した」と、コクランワクチンフィールド(イタリア、アレッサンドリア)のTom Jefferson, MDおよび共同
研究者らは記している。「個人(および環境)衛生と感染症との関連を示す明らかな証拠もある。我々は、個人衛生、距離の確保、バリアなど、ウイルス性呼吸器感染症の蔓延を防止または減少させるための公衆衛生対策の有効性に関するエビデンスのシステマティック・レビューを行った」。

研究者らは、無作為化試験、コホート研究、症例対照研究、前後比較試験など、呼吸器ウイルスの感染を予防するための介入に関する報告を対象として、言語を指定せずに、Cochrane Library、MEDLINE、 OLDMEDLINE、EMBASE、CINAHLを検索した。検討対象となった介入は、隔離、検疫、距離の確保、バリア、個人防御、衛生などであった。

読み取られた2300のタイトルから、51の研究に関する49の論文を含む、138の全文が取り込まれた。3件の無作為化対照試験および大部分のクラスター無作為化対照試験は、質が低かった。観察研究の質はさまざまであった。不均一性のため、6件の症例対照研究を除いて、大部分のデータのメタアナリシスは実施できなかった。

研究者らは、最も質の高いクラスター無作為化試験に基づいて、年少児を対象とした衛生処置からなる介入によって、ウイルス性呼吸器感染症の蔓延を防止できる可能性があると結論付けた。

6件の症例対照研究のメタアナリシスの結果によれば、物理的方法は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の蔓延防止に極めて有効である。これらの介入は、1日10回以上の手洗い(オッズ比[OR]、0.45;95%信頼区間[CI]、0.36‐0.57;治療必要数[NNT]、4;95%CI、3.65‐5.52)、マスクの着用(OR、0.32;95%CI、0.25‐0.40;NNT、6;95%CI、4.54‐8.03)、N95マスク(手術用サージカルマスクと区別してレスピレータマスクと呼ぶ。油分を含まない微粒子を95%カットする効果がある)の着用(OR、0.09;95%CI、0.03‐0.30;NNT、3;95%CI、2.37‐4.06)、手袋の着用(OR、0.43;95%CI、0.29‐0.65;NNT、5;95%CI、4.15‐15.41)、ガウンの着用(OR、0.23;95%CI、0.14‐0.37;NNT、5;95%CI、3.37‐7.12)、手洗い、マスク、手袋、ガウンの併用(OR、0.09;95%CI、0.02‐0.35;NNT、3;95%CI、2.66‐4.97)であった。

通常の手洗いに抗ウイルス薬や消毒薬を追加することで、呼吸器感染症の蔓延がさらに防止できるかどうかは不明である。通関港でのスクリーニングなどの世界的対策および距離の確保は、適切に評価されず、これらの方法に関して確固たる結論は得られなかった。

「呼吸器ウイルス感染症の蔓延を防止または減少させるための物理的方法を長期間、日常的に実行することは困難かもしれないが、多くの簡単かつ安価な介入が蔓延防止に役立つ可能性がある」と、レビューアーは記している。

問題点として、非盲検化によるバイアス、公衆衛生緊急事態を最小限に抑えるための性急な介入デザイン、非無作為化、不十分な報告、不均一性、介入のコンプライアンス不良など、レビュー研究に固有の問題点が挙げられる。

「簡単な公衆衛生対策は、特に、教育などの体系的プログラムの一部である場合および一緒に行われる場合に、呼吸器ウイルス感染の減少に極めて有効であるように思われる」と、レビューアーは結論付けている。「最も良い組み合わせを評価するために、大規模な実践的試験をさらに行う必要がある。差し当たり、呼吸器ウイルスの感染を防止するために、頻繁な手洗い(消毒薬を使用または非使用)、バリア(手袋、ガウン、マスク)、 呼吸器感染症の疑いがある患者の隔離を組み合わせて実施するよう勧める」。

このレビューは、コクラン共同計画運営委員会(Cochrane Collaboration Steering Group)(英国)および各レビューアーの機関から助成を受けた。レビューアーは、資金に関する情報を明らかにしていない。

付随論説において、McGill大学(カナダ、ケベック州モントリオール)のMartin Dawes, MD, FRCGPは、手洗い、ならびに、マスク、手袋、およびガウンの着用は極めて有効であると指摘している。

「政府が発した呼吸器ウイルス蔓延防止対策は、間違ってはいないが、裏付けのないものもある」と、Dawes博士は記している。「Jefferson博士および共同研究者のレビューによって、介入の有効性およびそれらを裏付けるエビデンスの強さがさらに明白になるであろう。例えば、手洗い、フェイス・マスク、手袋の治療必要数を医療従事者の注意書に追加することが可能となる。このレビューの知見を確認するため、およびインフルエンザの疑いがある患者の管理における他の不確実性領域を検討するために、政府は引き続き研究資金を提供すべきである」。

Dawes博士は、資金に関する情報を明らかにしていない。


2007.12.6 Medscapeより引用