子の成長に影響も

5年前から兵庫県西宮市にある武庫川女子大で教えるようになったことがきっかけで、女子大の健康事情を調べることになった。

ボランティアとして参加してもらった250人の女子大生の24時間尿を集め、分析した。尿中に排泄されたイソフラボン量は平均10マイクロ(マイクロは100万分の1)モル(モルは分子量を表す単位)。兵庫県の住民検診の平均(約15マイクロモル)より3割ほど少ない。

毎日大豆を食べていると尿中のイソフラボン量は40マイクロモル、週3−5回だと25マイクロモルになる。10マイクロモルは、大豆をまったくたべていないかどうかという境目の数値だ。

尿中のタウリン量も調べた。アミノ酸の一種であるこの物質がどの程度含まれているかどうかで、毎日の食事でとる魚の量の目安になる。女子大生250人の平均値は、やはり兵庫県住民検診の平均の6割程度だった。

大豆や納豆、豆腐、煮魚や焼き魚といった日本人の長寿を支える伝統食は、若い世代の食卓から消え去りつつあるようだ。

若い日本人女性を見ていると、ダイエット志向が行き過ぎている気がする。体重(キロ)を身長(メートル)で2回割って算出されるBMIが18以下の「やせすぎ」が20代女性で20−25%いるという。

やせすぎの女性が妊娠し子どもを産むとなると、どうしても低体重で低栄養な赤ん坊ができやすい。低体重・低栄養素で生まれると将来、心臓病や脳卒中など血管系の病気になりやすいという英国の研究報告もある。行き過ぎたダイエットを早急に改めてもらわねば、子どもが将来、生活習慣病になりやすくなる。

健康的に体重を増やさない、肥満にならないという「究極のダイエット食」は日本食だ。とくに大切なのがごはん。日本人の場合、エネルギーの約6割をごはんが占め、余分な脂肪摂取を抑えている。パンなどと比べ糖分の吸収に時間がかかるため、肥満や糖尿病予防になる。

小食で清涼飲料水だけでスリムにさえなればヘルシーと考えるのは大きな間違いだ。
(武庫川女子大国際健康開発研究所長  家森 幸男)


2006.8.6 日本経済新聞