体に赤い発疹(ほっしん)が出たりリンパ節が腫れ始めたりしたら、成人T細胞白血病(ATL)の初期症状かもれない。母乳や夫婦間の性交渉などを通じ、主に家族内で感染する難病だ。

原因は「HTLV−1」というウイルス。日本に約120万人の感染者がいるとされ、半分が九州・沖縄に集中する。潜伏期間が長く、発病するのは平均60歳。高齢だと骨髄移植ができないため、平均生存期間はわずか1年強しかない。
ただ発病するのは感染者の5%前後。大半は一生、症状が出ない。また30代−40代で発病することがあり、骨髄移植が可能なこともある。高齢者に使えるように改良した骨髄移植も研究段階では実施され始めている。

このウイルスは、目の病気や下半身マヒなど様々な病気を引き起こす。存在自体がほとんど一般の人には知られていないのが現状だ。
東京大学医科学研究所附属病院(東京・港)は4月上旬、発病前のウイルス感染者の相談に応じる国内初の専門外来(予約制)を設置する。渡辺俊樹教授は「正しい知識を感染者に広めるところから始めたい」と話す。


HTLV-1感染で起こる病気と症状

成人T細胞白血病
発疹やリンパ節の腫れ、多臓器不全、日和見感染など

HTLV-1関連脊髄症
排尿障害や下半身のマヒ。生涯にわたる治療が必要
HTLV-1ぶどう膜炎
視界の曇り。1-2ヶ月の投与で完治するが、再発する


2006.4.2 日本経済新聞