夏場の日焼けに注意
よく洗ってツボも刺激


日差しや紫外線が強い季節。髪が変色したり、頭皮が日焼けしたり。食欲が落ちて食事の栄養バランスを崩すのも、髪の健康を害する一因だ。秋以降も健やかな髪を維持できるように、日々の習慣を見直そう。

紫外線は1年中降り注いでいるが、5月から8月にかけては特に量が多い。日本人は黒いメラニン色素を多く含む髪が一般的で、紫外線を防御する力が高いとされる。しかし、紫外線から受けた悪影響をため込んでいると、気付いたときにはパサつきや抜毛、切れ毛で髪を切るしかないということにもなりかねない。

資生堂の研究によると、健康に見える黒い髪でも紫外線により、髪の内部を保護するキューティクル(毛表皮)が変性していることがわかった。紫外線を無防備に浴び続けるとキューティクル内部の空洞化を招き、やがてキューティクルのはがれ、ツヤの低下につながる。また、ヘアカラーによってメラニン色素が少なくなった髪では、キューティクルだけではなく、髪の内部にも影響があり、切れやすくなるなど髪の強度が低下するのだという。

意外に見過ごされているのが頭皮への影響。東京・銀座や大阪・心斎橋でトリートメント専門店、セントプライドを運営するシックコーポレーション(兵庫県宝塚市)の山本幹雄社長は「夏は特に頭皮に分泌された皮脂の膜が張り、皮膚と同様にオイルを塗った日焼けしやすい状態」という。

髪の分け目を同じにし続ければ、集中的に紫外線を浴びて腕と同じように頭皮がむけることもあるし、細胞の老化にもつながる。このため、夏場はひんぱんに分け目を変えるのがいいようだ。

また、シャンプーやリンスなどが落ちていなければ、頭皮では、皮脂、汚れ、洗い残しなどが混じり合って毛穴にたまることになる。太くてコシのある若々しい髪が生えるのをさえぎるだけでなく、酸化して、においを発することにもなる。

紫外線対策用のシャンプーやリンスなどヘアケア商品も市販されている。しかし、髪の健康を長く維持したいならば、頭皮のケアを意識する洗髪の仕方を覚えよう。身につければ、若々しい髪が生えてくる土壌ができる。

ポイントは毛穴を意識しながら、頭皮をしっかりともむこと。シャンプーを泡立て、髪や頭部にゴシゴシとこすりつけるだけでは、毛穴に詰まった汚れは落ちにくい。「毛穴の形状を変え、汚れを押し出す」(山本社長)。頭骨と頭皮をずらすイメージで、指の腹を使って色々な方向からマッサージをすると、汚れが浮き上がってくるという。

約5分を目安に、シャンプーをしたままシャワーキャップをかぶり、湯船につかってマッサージするのも手。血行がよくなり、ストレスを緩和する効果がある百会(ひゃくえ)をはじめ、頭部に集中する様々なツボも刺激できる。泡立ちが悪いときは2度洗い。髪はぬれていると傷みやすいが、キューティクルは整いやすいので「根本から毛先に指を通しながらよくすすぐといい」。トリートメントは髪だけにつけ、頭皮には不要。しっかりとすすごう。

しかし、髪や頭皮のケアだけで若い頃と同じ美しい髪を維持するのは難しい。社会進出によるストレスが原因といわれているが、抜け毛による薄毛や白髪に悩む女性は増えている。

女性の薄毛に関し、ライオンの生物科学センターが女性ホルモンの減少との関係について研究。女性ホルモンが減少すると発毛促進にかかわるたんぱく質の遺伝子の発現を抑制することを解明した。

白髪は精神的ストレスなどにより、段階的に急増することがあるとされる。カラーリングなどで対応できるが、「身体が発するシグナルと受け止めることも必要」と日本医学育毛協会会長の福田金寿医師は訴える。毛穴のケアのほか、生活習慣や食生活の見直し、ストレスの軽減など、「心身の状態を整えてくれることで新しく黒髪が生えてくることもある」という。

夏の髪、頭皮対策はもちろんだが、髪のトータルな健康には、日々の生活を見直すことも欠かせない。

ジャンプーとトリートメントのコツ

(1)シャンプー前のすすぎ
前によくすすぐ。2分程度が目安
(2)シャンプーで洗う
シャンプーが泡立っている状態のとき、頭皮をもむようなイメージで指の腹を使ってマッサージする。一般的には5分程度。泡立ちが悪いときは再度すすぎ直し、2度洗いをする
(3)シャンプー後のすすぎ
まず髪についている泡を取り、根本から毛先に向かって指を通す
シャンプーを残さないようにしっかりとすすぐ
(4)トリートメントをする
まず傷みやすい毛先につけ、次に根本から毛先の順になじませる。頭皮につける必要はない
(5)トリートメント後のすすぎ
すすぎ残しが髪のきしみの原因になることがあるので、しっかりすすぐ

(注)シックコーポレーションの取材により作成

2005.7.16 日本経済新聞