量減らずダイエット人気だが
栄養バランスを大切に

ご飯、めん類、パンに多く含まれる炭水化物。「肥満につながる」と、摂取量を減らすダイエットが広がっている。ただ、極端に減らすと栄養バランスを崩し元も子もない。どのように摂取すれば適度に体重を減らし、生活習慣病を防ぐことができるのか。

サウスビーチ・ダイエット、アトキンズ・ダイエット……。どちらも米国で話題になった、ローカーブ(低炭水化物)ダイエットだ。

炭水化物は主要なエネルギー源。体内で糖分に変化すると血糖値を下げるインシュリンが発生し、糖分は脂肪へ変化する。パンやご飯の摂取量を減らせば糖質エネルギーを抑えられ、体脂肪の分解も促すという考えに基づく。

火付け役は故ロバート・アトキンス博士の著書「アトキンス博士のダイエット革命」。炭水化物の摂取は極端に減らし、肉や魚などはどれだけ食べてもいいとする理論で、肥満や太り気味の人が多い米国で広く受け入れられた。

一方、期間限定で炭水化物を減らすのがサウスビーチ・ダイエット。パンやパスタを食べずにいるのは最初の2週間だけでこの間、体にため込んだ脂肪は燃焼される。3週間目から全粒粉のパンなど繊維の多い主食を取り入れる。管理栄養士でダイエット法を指導したことがある荒牧麻子さんは「米国でも改良中のダイエット法ではあるが、貧血になりにくく、骨密度もへらないようだ」と話す。

しかし、日本人と米国人とは体質や食事習慣の違いがあり、そのままこれらのダイエット法を取り入れるのは難しい面がある。女子栄養大の香川靖雄副学長は「ローカーブは半年程度の短期的な減量には効果的。代替となる肉を食べ過ぎることによる影響などは長期的データがないので検証が必要だ」と解説する。

重要な栄養素の摂取量を減らすことに否定的な専門家は多い。日本の栄養学では一般的に、1日の総カロリーの60%を炭水化物、25%を脂質、15%をたんぱく質からとることを標準としている。ご飯やパスタなど炭水化物もほどほどにとりながら、体のバランスを整えるダイエットする法はないのか。

そんな理想に近いのがゾーン・ダイエット。ホルモンのバランスがよい「ゾーン」という状態を目指す食事法で、ご飯やパンは添え物程度にし、代わりに炭水化物が低密度でその他の栄養素を多く含む果物や野菜をとる。たんぱく質7グラムに対し、炭水化物9グラム、脂肪1.5グラムの割合で食べることで、バランスを整えられるという。

このダイエットで特徴的なのが「手のひらルール」。一回の食事でとる低脂肪たんぱく質は手のひらの厚さ、広さと同じ量までとし、たんぱく質の量をもとに炭水化物の摂取も自分量で決める。例えば、鶏の皮なし胸肉113グラムには、温野菜4カップ分かパスタ約60グラム。オリーブオイル小さじ1強といった具合だ。温野菜やパスタを減らして調整し、果物を加えてもいい。

「バリー・シアーズ博士のゾーン・ダイエット」の監訳を手掛けた赤坂TBRビルクリニックの岳マチ子院長は「炭水化物やたんぱく質のバランスがよければ、エネルギーが少なめの食事でも空腹感を感じなくなる」と話す。

香川副学長が提案するのは「四群点数法」。肥満を長期的に、リバウンドなしに解消するのに適切なバランスを設計している。実際にはエネルギー量を基準にした計算が必要で、80キロカロリーが1点。第1群(乳・卵)、第2群(魚・肉・豆)、第3群(野菜・果物・イモ)から3点ずつ、第4群(米・パン・油・砂糖)から活動量に応じたエネルギー量を摂取する。

家事や事務などの労働をしている成人女性の場合、4群の穀物は9点が目安。減量する場合は四群の穀物から点数を減らし、1−3群の9点を減らしてはいけない。「同じ米でも白米より栄養価が高いはい芽米を食べるのが理想」と香川副学長は強調している。

実は、日本人が食べる炭水化物の量は減少している。1960年には1日の消費カロリーに対し、摂取量は76.4%あったが、2003年には57.9%まで低下した。

ただ、外食が多いと炭水化物が多くなりがち。コンビニで食事をすますしかない場合でも、おにぎり2個食べるより、おにぎり1個とサラダ、肉などの組み合わせの方がバランスがいいのは言うまでもない。

2005.4.23 日本経済新聞