家族連れが増加
素材・味にもこだわり

居酒屋やレストランを経営する大手チェーンなどが全面禁煙の店舗を相次ぎ開き、子供連れの客など従来の店舗とは異なる利用者層が増えている。煙が気にならない席で食材の香りなどを楽しんでもらおうとメニューを工夫する店も多い。非喫煙人口が大半を占める中、飲食チェーン店でも全面禁煙が受け入れられ始めたようだ。

居酒屋チェーンのワタミは7月、JR赤羽駅前に居酒屋としては業界で初の全面禁煙とした「手づくり厨房」(東京・北)をオープンした。開店から1カ月たち、「乳児や子供連れの家族や妊婦など、分煙にとどめていた従来の居酒屋店ではあまり訪れなかった客層が目立つ」という。

潜在時間が長く、アルコールを飲む客が大半の居酒屋では「客数減少につながる」というのが定説だった。だが、売上高は従来の分煙業態とほぼ同水準に設定した計画値を約2割上回るペースで推移しているという。

分煙してある店舗でも喫煙席に近い席に座った非喫煙者はたばこの煙などが気になる。「てづくり厨房」では喫煙を認めるのはエアカーテンで仕切った2−3人分の喫煙スペースのみだ。

この結果、来店客へのアンケートでは9割近くが「料理がおいしい」と回答。「全面禁煙は料理の味を伝える点で有効」(渡辺美樹社長)と判断し、今後、地方都市も含めて多店舗展開に乗り出す。

サッポロライオンも7月20日、全席禁煙のイタリアンレストラン「ピッツァ&パスタ工房 ジーオ・パンチェッタ」を開いた。喫煙できるのは出入り口横の6−8人のスペースのみ。一方、石釜で焼いたピザなど料理の手法や素材へのこだわりを売り物としている。

客単価は2千円と、ビアホールの「ライオン」など既存業態より約3割低く設定。その分小さな子供がいる家族層など分煙店で見込めなかった客層を取り込み、売り上げはほぼ計画通りという。

グローバルダイニングは9月1日から、メキシコ料理店「ゼスト」8店で午後5時から午後10時までほぼ全席を禁煙にする。夕食時間帯を禁煙とする取り組みは珍しい。個室やカウンターバーなど一部では喫煙可能とするが、「大半の席では煙やにおいを気にせず料理を楽しめるようにする」という。

百貨店内などの飲食店
全面禁煙に傾く
百貨店やショッピングセンターでは施設内の飲食店での禁煙対応が進んでいる。イオンはフードコートが原則として全席禁煙。テナントのレストランは全面禁煙か分煙の二者択一だが、全面禁煙の店が増えているという。三越では全店の売り場が全面禁煙で、館内のレストランも約半分が全面禁煙になっている。

2003年に不特定多数の人が集まる施設の管理者に受動喫煙を防止する措置を義務付けた健康増進法が施行され、百貨店などもその対象となった。また、地方自治体では禁煙対応している飲食店を認証する制度が広がっている。

日本たばこ産業の調べでは、成人の喫煙率は低下が続き、04年は29.4%。5年間で3.5ポイント下落した。特に男性は6.6ポイントと下落幅が大きい。
2005.8.27 日本経済新聞