重金属や余分なミネラルなど毒素
食生活改善で効果
専用サプリも人気に


体の中にたまった有害な重金属や余分なミネラルなどを排除する「デトックス」と呼ぶ健康法が注目されている。重金属などが蓄積されると微量であっても高血圧や肥満といった生活習慣病につながるという。これらを取り除くポイントの第1は食生活の改善。体に重金属がどれほど蓄積されているかを調べるサービスもある。

「デトックス」とは解毒や浄化という意味で、体の中にたまっている毒素を排除する健康法のことだ。体調が良くなる、肌が若返る、生活習慣病の予防になる――などの効果があるとされ、健康雑誌などで目にする機会も増えてきた。「足りない栄養素を補う足し算のサプリメントに対して、余分なものを取り除く引き算がデトックスの考え方だ」と銀座サンエスペロ大森クリニック(東京・銀座)の大森隆史院長は説明する。

食品や水道水などを通じて体内には鉛やアルミニウム、ヒ素などが体の細胞のたんぱく質などとくっつくことで蓄積している。最近の研究では、中毒症状を起こさないわずかな量でも体に悪影響を及ぼすことが分かってきた。脂肪を分解する酵素の働きを妨げるため、ダイエットしにくくなることもあるという。

有機水銀が胎児の健康に影響を及ぼす恐れがあるとして、厚生労働省は妊婦などに有機水銀を多く含むキンメダイなど深海魚や大型魚の摂取量を控えるようにと注意を促している。同クリニックが高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などの患者の頭髪を調べたところ、健康な人に比べて水銀が多く検出された。

ただ、重金属は魚をはじめ身近な食品に含まれているため、摂取量をゼロにするのは不可能だ。有害物質を蓄積せず排出することが重要になる。

まず、効率よく排出する食事を心がけることだ。ゴボウやコンニャクなどに含まれる食物繊維は余分なミネラルが体内に取り込まれるのを防ぐ働きがある。タマネギやリンゴ、コリアンダー、ニラ、ニンニクなどは重金属を捕らえて体外に排出する。肝臓の解毒力を高める亜鉛やセレンを含む緑黄野菜などと組み合わせて、取り込まれた毒素を排出するのが効果的だ。

魚は脂肪の多い大型魚は控えめにし、近海の小型魚を食べるように心がけるとよい。大型魚は焼くか蒸すかなどの調理法で脂肪を落とすことで、ある程度、重金属を取り除けるという。

サプリメントも役立ちそうだ。サプリメントというと、栄養素を補給するタイプが一般的だが、不要な成分を取り除く「デトックスサプリメント」が脚光を浴びている。抗酸化作用や糖類を効率的にエネルギーに変える機能を持つ「α−リポ酸」はその1つ。たまった水銀や鉛を捕まえて体外に排出する。実験では、尿に含まれる水銀や鉛の量がα−リポ酸を摂取した翌日には1.5−2倍増え、排出されたことが分かった。

都内に20店舗を展開するコーエイドラッグ(東京・品川)のように、デトックス関連商品をまとめて紹介するコーナーを持つドラッグストアも増えてきた。「サプリメント業界の新しいトレンド」と同社の広瀬泰三社長。

一方で、「サプリメントに過度の期待は禁物」と毒性学に詳しい北海道医療大学の遠藤哲也講師は指摘する。どこまで効果があるのか不明な部分が多いためだ。バランスのよい食生活と組み合わせて使うことが大切と助言する。

有害物質の蓄積具合は生活習慣や体の不調からある程度分かる。イライラしやすい、関節が痛むといった自覚症状がある場合には注意したい。

体にどれくらい蓄積しているかを知るには毛髪ミネラル検査を受ける。髪の毛には体内の有害金属などが濃縮されるためだ。杏林予防医学研究所(京都市)やヒューマンライフ医科研究所(東京・港)などが1万円程度で受け付けている。

有害物質の蓄積具合をチェック
生 活 習 慣
  ・野菜をあまり食べない
  ・ストレスが多い
  ・油っこい物が好き
  ・魚介類を生で食べることが多い
  ・タバコを吸う
  ・あまり運動しない
  ・歯に種類の異なる金属の詰め物がある
自 覚 症 状
  ・イライラしやすい
  ・シミが増えた
  ・気分が沈みやすい
  ・肩がこる
  ・にきびができやすい
  ・便秘気味
  ・関節が痛む
  ・風邪を引きやすい
該 当 項 目 数 が・・・
0-5

注意度40%未満で安心

6-11 注意度40%以上80%未満で要注意。解毒を心がけるように
12-16 注意度80%以上で健康障害の危険。解毒の必要あり
(大森隆史・銀座サンエスペロ大森クリニック院長による)


2005.3.5 日本経済新聞