日本人は塩辛い漬物やみそ汁でご飯をたくさん食べる主食偏重の食習慣や、めん類好きがたたってか食塩の摂取量が多い。厚生労働省は1日10グラム以下にしようと呼びかけているが、国民栄養調査の結果によると、13グラム前後もとっている。高血圧患者は大変多く、全国に3千万人くらいいると推定されている。

そこで減塩だが、ただ食塩を減らせといっても、ご飯好きの日本人にとっては耐えられないし長続きしない。ここで提案したいのは、先週も触れた中国の陰陽説的発想をヒントにした、2つを1つで考える方法。

第1に料理に油や油分の多い種実類を組み合わせる。減塩してもいためものだと油の持つうまみとコクでおいしく食べられる。ゴマあえ、クルミあえ、白あえも、食塩が多いと逆に塩辛くて食べられないほどだ。

第2に酢や香辛料でアクセントをつける。酢の物は酸味の刺激で、減塩しても味が濃く感じる。食塩がわりにレモンやカボスを使うのも良いだろう。からしやワサビであえた料理も辛味の刺激で減塩できる。

第3に牛乳や乳製品を組み合わせる。こちらもうまみとコクが減塩を意識させない。グラタン、ホワイトシチュー、ヨーグルトサラダなどが好例だ。

第4にトマトやその加工品をつかう。うまみ、コク、酸味もそろっているので、チキンライス、スパゲティナポリタン、ビーフシチューなど塩分が少なくても十分味わいがある。

減塩とは、ただ食塩やしょうゆを減らすという考えから脱皮して、何を組み合わせれば、おいしく減らせるのかを考えるべきだ。
(新宿医院院長 新居 裕久)

2004.10.16 日本経済新聞