赤い色素が動脈硬化防ぐ

 

BSE(牛海綿状脳症)騒動や鳥インフルエンザの影響で、魚が食卓にのぼる機会が増えているのではないか。秋から冬にかけて脂がのるサケは、動脈硬化の予防など様々な役割があるとされる。頭から骨まで余すことなく食べてみよう。

日本人は生サケだけでなく、塩サケ、スモークサーモン、缶詰、ふりかけなど加工品も含め、年45万トンものサケを食べる。ゆでたサケを味付けしたフレークは最近、ご飯のお供や酒のさかなとして大人から子供まで人気が高い。マルハのサケの瓶詰フレークの昨年の生産個数は前年の2倍の30万個。「用途が広いことが人気の理由」という。

血管若返る成分

サケの栄養成分をみよう。「パワーの源はサーモンピンクにある」と話すのは独立行政法人食品総合研究所の鈴木平光・機能生理研究室長。サケはオキアミやエビなどをエサとして食べ、それらが含む赤だいだい色の色素、アスタキサンチンを体内に蓄える。

アスタキサンチンはニンジンなどの緑黄色野菜が多く含むベータカロチンと同じカロチノイド系色素の一つ。サケ以外でもタイやキンメダイ、カニの甲羅にも含まれるが、サケほど多く含む魚はない。アスタキサンチンはメスの場合、産卵期になると卵巣に移行し、すじこやいくらにも多い。

アスタキサンチンは活性酸素を除去し、動脈硬化を防ぐ。ポリフェノールではないが、働きは似ている。毒性の強い一重項酸素の酸化反応には、ビタミンEやベータカロチンより格段に強い抗酸化力を発揮するという。ベニサケの切り身一切れと同じ抗酸化力を得るには、ビタミンEの豊富なアーモンドを1.1キログラムも食べる必要があるそうだ。

サバやマイワシよりは少ないが、血液をさらさらにして、血管の若返りに役立つドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)という2つの脂肪酸も豊富。そのほか、良質なたんぱく質、カルシウムの有効活用に必須のビタミンD、貧血を防ぐビタミンB12、葉酸、皮膚炎を防ぐナイアシンも含む。

身の部分以外にも様々な役割を果たす部位が多い。「めふん」(塩辛)として食べる腎臓はビタミン、ミネラルを、中骨は骨格の形成に役立つカルシウム、リンが豊富。「氷頭なます」として食べる頭部の軟骨部分はコンドロイチン硫酸を含むため、脂質の吸収を抑制する働きがあるともいわれる。皮はアミノ酸を豊富に含むコラーゲン、皮の下の脂質もDHA、EPAを含む。鈴木室長は「サケは泳ぐ栄養カプセル」と語る。

色濃いものを選ぶ

食生活にサケを上手に取り入れるため、料理研究家の田口道子さんにサケ料理のコツを教えてもらった。まず、おいしいサケの見分け方。身のオレンジ色が濃く、色つや、弾力がよく、ウロコがはがれていないものを選ぶ。

サケの種類によって料理方法も異なる。日本で広く流通している脂が少なく身が締まっているシロサケ、ベニサケは、淡白な味。そのまま焼いたり、フライや空揚げ、鍋や汁物など幅広い料理に向く。

脂ののりがよく、身は硬めでしまっているギンサケはクリームシチューにもよい。脂のたっぷりのったキングサーモンはステーキ、アトランティックサーモンはカルパッチョなど生食でもおいしい。

小麦粉をまぶした生サケを焼いてバターで風味つけたサケのムニエルは主菜にふさわしい一品だ。寒い日にはDHA、EPAの豊富な生のベニサケかシロサケのアラとジャガイモ、ニンジン、ダイコン、ゴボウ、ネギなどの野菜と合わせ、みそと酒かすで味付けをした三平汁も温まる。

焼いた塩サケをほぐし、しょう油漬けのいくらとともにごはんに盛り、のりと大葉をちらせば、サケといくらの親子丼ができる。「サケは和洋中すべての料理にあわせやすい食材」(田口さん)という。

2004.2.14 日本経済新聞