皮下で成長産卵する寄生虫、ブラジルでは注意を


皮下で成長産卵する寄生虫、ブラジルでは注意を

 ちょうど1年前に、「節足動物による感染症・皮膚炎」特集を担当して以来、編集部の中では、“虫系に詳しい”という評価(レッテル?)をもらっています。

 この特集の取材では、面白い話をいろいろ教えていただき、とても楽しかったです。例えば、マダニの幼虫は足が6本で、成虫になると8本になるということ、皆さん、ご存じですか。2本だけ足が増えるって、どういうことなのでしょう。着ぐるみみたいなイモムシが脱皮して、すっきりとした足が6本出てくるのは理解できるような気がするのですが…。6本から8本になる進化ってどうして生まれたのか、摩訶不思議。節足動物は地球上で一番繁栄している生き物ともいわれています。その多様性はすさまじく、興味深い世界です。

 最近書いた寄生虫によるクドア食中毒(「ヒラメ刺身で下痢・嘔吐は「クドア」が原因」)では、原因微生物であるクドアの美しさに心を奪われる思いでした(ちょっと大げさですが)。寄生虫というと、細くて長くて…のイメージですが、クドアの胞子は、まるで梅の花びらのようです。既に見ていただいた読者からは、「かわいい」との感想を頂いています。まだ、お読みでない方、ぜひ一度、クドアの写真だけでも見てください。

表皮下で1cmまで成長する寄生虫「スナノミ」
 「節足動物を毛嫌いしない、寄生虫も先入観に負けずに取材する」が方針の私ですが、ヒトの表皮の中に寄生するノミがいると聞いて、かなりぎょっとしました。ご存じの方もいると思いますが、それはスナノミ症(Tungiasis)です。これは、ノミの一種であるスナノミ(Tunga penetrans)による寄生虫病で、スナノミのメスが、ヒトの足の爪周囲などから皮下に入り込んで血を吸い、1cm程度まで大きくなった後に、皮下に100個ほどの卵を生み、産卵した場所の皮膚は黒変する…。

 皮下に寄生するというと、疥癬が思い浮かぶと思いますが、疥癬は顕微鏡サイズ。拡大しないと手足が見えませんが、スナノミは虫そのものが、肉眼で容易に見えるようです。

 だいぶ怖い話ですね。

 スナノミが寄生しても、当初は痛みを感じず、スナノミが皮下で大きくなるに従い、炎症や潰瘍が生じ、歩行困難になることもあるとか。また、破傷風などの細菌感染症が媒介されることもあるそうです。

 この感染症は、中南米やアフリカなどの熱帯、亜熱帯地域に広く分布しています。ビーチなども含めて砂地(sandy)を好んで生息していることから、日本語ではスナノミと呼ばれているのかもしれません。

 ウェブで「スナノミ」と検索すると、出るわ、出るわ。海外旅行中に被害に遭ったという体験談が多数引っ掛かってきます。そんなサイト情報によると、流行地では「スナノミ取りの達人」なるものもいるとか、いないとか…。

 スナノミ症の写真を直視できず、この記事には載せられませんでしたが、ご興味ある方は、「Tungiasis」で検索してみてください。海外のサイトの方が当然ながら情報は豊富。普段なかなか見ることができない映像が出てくると思います。

 米国疾病対策センター(CDC)は、このスナノミ症はブラジルの貧困地域に一般的なものとして、サッカーワールドカップなどでのブラジル渡航者に注意を呼び掛けています(「ブラジル旅行者への注意事項をCDCが発表」)。

 ところ変われば、病気も変わる。

 渡航歴のある患者さんは、思いもよらない疾患を持ち帰ることがあります。先生方、どうぞご注意ください。

引用:日経メディカル(小板橋律子) 2014年6月18日(水)

2014年6月20日更新