保湿剤をこまめに
洗いすぎ注意 かゆみも誘発

木枯らしが吹き始めてまもなく冬本番を迎える。日増しに空気が乾き、乾燥肌やアトピー性皮膚炎に悩む人にはつらい季節だ。若者から高齢者まで肌のトラブル症状を訴える人が増えている。かさつきやひび割れ、かゆみの防止にはまず肌の保湿が肝心。肌のメカニズムを知り、効果的なスキンケアをこころがけよう。

「秋口から夕方になると顔や手足がかさかさしてかゆみがひどいのですが」。東京都内に住む会社員の女性(32)はドラッグストアの保湿剤売り場で店員に相談する。

「成分のほかに使い心地の違いを説明して、目的に合わせて勧めています」。とマツモトキヨシ池袋パート2店(東京・豊島)の森崇店長は語る。水洗いなどの仕事が多い人にはしっかりとつくクリームを、オフィスでパソコン作業をする人には手などがべたつかないように乳液やローションなどさらさら感のある商品を勧める。「最近は若い女性のほかに、中高年の男性・女性もよく買いに来ます」(森店長)という。

今年も今月に入り気温がぐっと下がったころからよく売れ始めた。同店では専用の商品を集めた棚を設置、売り場を拡充している。

乾燥肌とは皮膚に潤いを与える水分がなくなり、かさかさになったり、ひび割れができる状態。皮膚の表皮は基底細胞からどんどん新しい細胞が生まれ、表面に向けて皮膚の細胞ができてくる。皮膚の表面には死んだ角質細胞が並ぶ。生まれてから約7週間でこの角質細胞があかとなってはがれ落ちていく。

角質細胞の中には 一定の水分があり、間を埋める細胞間脂質(セラミドなど)や角質細胞の表面を覆う皮脂により保たれている。皮脂は毛根の根本付近にある皮脂腺から分泌される。皮膚科専門医の渡辺晋一帝京大学医学部教授は「冬場になると角質層の水分が蒸発しやすくなるし、皮脂の分泌量も減るため夏よりも乾燥肌になりやすい」と説明する。

乾燥肌は老化も引き金になる。年齢を重ねるとセラミドや皮脂が不足しがちになるのでかさかさした肌になりやすい。加えて、脚や腕などは皮脂を分泌する皮脂腺の数が少なく、すねや二の腕は乾燥肌になりやすい。

強くこすらず

皮脂やセラミドの分泌の盛んな若い人で乾燥肌になることが多いのは、洗いすぎて脂分を落としてしまっている可能性が高い。「水分を補うつもりで頻繁に洗うのは逆効果」(渡辺教授)だ。界面活性効果の高いせっけんの利用もできるだけ少なくするほうがいい。

さらにお風呂での洗い方がかゆみを増長させる。ナイロンタオルやあかすりなどであかをゴシゴシ落としてしまうと角質細胞を壊すことになる。壊れた角質細胞からサイトカインなどが分泌され好中球やリンパ球が集まり炎症を起こす。この炎症が末しょう神経を刺激してかゆみを引き起こすと考えられている。

ほかにもかゆみはあらゆる刺激によって起こる。例えば、化学物質や紫外線、体温の上昇、さらに洋服や肌着なども原因だ。渡辺教授は「皮脂やセラミドがはげ落ちた肌はバリアがなくなり何にでも反応しやすく敏感になってしまう」と指摘する。肌着は刺激の少ない木綿がいいし、電気毛布などの使用も乾燥を助長させるので利用を控える方がいい。

尿素入りに効果

乾燥肌の対策は水分の保持。尿素入りの保湿剤が多いのは角質細胞の水分には尿素が20−30%程度含まれているためで、保湿効果が高い。ただ、乳児や高齢者などは皮膚が薄いため、奥まで浸透しすぎるから、尿素の濃度が高くない方がいい。

かゆみだけならば保湿剤をこまめに塗り続けるのが一番。だが頻繁にかきむしると発しんができ、さらにかき続けて傷ができる人も少なくない。この段階になったら病院にいくべきだと専門家は訴える。

最近は中年の男性が悪化させて病院にくることも多いという。渡辺教授は「症状によるがステロイド剤を使うことで治療効果がある。悪循環を早く断ち切るためにも専門医の診察を受けてほしい」と助言する。

2002.11.23日本経済新聞