アルカリイオン整水器

用途別の加工や鉛除去も

健康志向の高まりを受け、胃腸に良いアルカリ性の水を家庭で作る「アルカリイオン整水器」が売れている。浄水器に比べると価格は割高だが、浄水器よりも1ランク上の健康志向関連製品として広まりつつある。年末は水まわり品の取り換えの時期。特徴を見比べ、用途に合った製品を選びたい。

アルカリイオン整水器の仕組みはこうだ。水道水を浄化した後、カルシウム剤を混ぜて電気分解する。炭酸イオンなどからなる酸性水と、ミネラル類を多く含むアルカリイオン水の2種類の水に分離する。

アルカリイオン整水器は浄水器と異なり、薬事法で規定されたれっきとした医療用具。アルカリイオン水が薬事法で認められた効能・効果は、1.消化不良 2.慢性下痢 3.胃酸過多 4..制酸 5.胃腸内異常発酵の症状改善。一方、酸性水は肌を引き締める効果があり、洗顔など美容に適している。

価格が手頃なのは象印マホービンの「ピュアバランス」と松下電器産業の「アルカリ工房」。アルカリイオン水は浸透圧が強く、野菜・ダシのうまみを引き出したり、お茶やコーヒーをよく抽出する効果がある。両製品の価格は比較的低めだが、こうしたアルカリイオン水の生成能力を十分に備えている。

料理用(強度アルカリイオン水)、炊飯用(中度アルカリイオン水)、飲用(弱度アルカリイオン水)、薬・ミルク用(浄水)、洗顔用(酸性水)の5つの使用に応じた絵柄スイッチがある。スイッチを押すだけで欲しい水を選べる。「アルカリ工房」は目の不自由な人向けに点字をつけた。

松下電器産業が今年2月に発売した「ウィル・ア・ピュア」は、トヨタ自動車など異業種企業との合同マーケティングプロジェクト「WILL(ウィル)」の参画商品。キッチンのインテリア感覚を損なわないよう、裏表ともにすっきりとしたシンプルなデザインにした。

アルカリイオン整水器は消耗品のカルシウム剤(3−4千円)を追加する必要があるほか、定期的に浄水用のカートリッジ(7千−1万3千円)を取り換えなければならない。カートリッジの取り換え周期は1−2年の製品が多い。

TOTOは利用者の手間を省くため、「アルカリ7」のカートリッジ交換を原則7年周期とした。活性炭カートリッジを1日1回、自動的に加熱洗浄することで実現したという。

東レとOSGコーポレーションの2社は家庭用浄水器の製造販売で実績がある。東レの「アルカリトレビーノ」は高さ22.5センチ、幅15センチ、奥行き8.5センチと業界最少クラスのコンパクトな設計にした。

安全であるはずの水道水だが、古い鉛製水道管から人体に有害な鉛が溶け出す恐れや、自治体の財政難から鉛製水道管の取り換えが進まない問題も出ている。厚生労働省は2003年4月から水質基準省令を改正し、水道水の鉛の含有量の規制を強化する。

これに対して松下電工が今年3月に発売した「アルカリミズトピア」は鉛を除去する機能を標準搭載している。活性炭カートリッジに、イオン交換樹脂という特殊な樹脂を配合。この樹脂が鉛を吸着・除去する。発がん性の疑いがある水中トリハロメタンも除去できる。研究開発型企業の日本トリムは1997年に九州大学と共同で、整水器で還元した水が様々な病気の原因となる活性酸素を消去する作用があることを立証した。同社の「トリムイオン」は独自開発で、安定した水質を保つための工夫を凝らしている。

 

(2002.12.21 日本経済新聞)