炎症性腸疾患 群馬大チームが発症メカニズム解明
  

 消化管に炎症を起こす「炎症性腸疾患」の発症メカニズムの一端を、群馬大先端科学研究指導者育成ユニット先端医学・生命科学研究チームの岩脇隆夫講師らが解明した。マウスによる実験で、発症に関わる細胞や遺伝子、タンパク質を特定した。国内では10万人以上の患者がいる難病で、治療や予防につながることが期待される。

 米ハーバード大、英ケンブリッジ大との共同研究で、成果は日本時間3日に英国の科学雑誌「ネイチャー」電子版に掲載された。

 同疾患は主に「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の2疾患からなる。発症の原因は解明されておらず、根本的な治療法もない。

 今回の研究では、細胞内で不要なタンパク質などを分解する機能「オートファジー」と、細胞内の小胞体に異常な構造のタンパク質が蓄積した際の防御システム「小胞体ストレス応答」に着目した。これらの機能に関わる遺伝子を、腸上皮細胞で欠損させ働かなくしたところ、腸炎が発症することが判明。同細胞の一種で、病原微生物などから腸内環境を守る役割を担う「パネート細胞」が炎症を引き起こす起点として機能していることも突き止めた。

 岩脇講師は「オートファジーや小胞体ストレス応答の機能が弱っている人に対してそれを補う薬ができれば、発症を抑えたり治したりできる可能性がある。研究の成果を薬の開発につなげたい」としている。

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2013年10月16日 提供:上毛新聞