アルツ患者に癌が少ない 【米国神経学会】
逆に癌にアルツ少ない、最大規模の研究から判明

 

  米国神経学会(AAN)は7月10日、アルツハイマー病患者に癌は少なく、癌患者にアルツハイマー病が少ないという研究結果を紹介した。同学会のNeurology誌オンライン版に7月10日付けで掲載。

 本研究では、北イタリアの60歳以上の患者20万4468人を6年間にわたって追跡調査した。調査期間中、2万1451人が癌を、2832人がアルツハイマー病を発症。癌とアルツハイマー病の両方を発症した人は161人であった。一般の発症率からすると、アルツハイマー病患者で癌を併発するのが281人、癌患者でアルツハイマー病を併発するのが246人と予測できることから、癌のリスクはほぼ半減し、アルツハイマー病のリスクも35%減少していることが分かった。

 「アルツハイマー病と癌の関係を示す研究はこれまでにもあったが、今回はこれまでで最大規模の研究であり、さらに、最初の疾病の診断の前後に2つ目の疾病が存在したかどうかに着目した点が強みである。この点に着目したのは、記憶力の低下が癌の化学療法の副作用と見なされるなど、新しい症状が診断済みの疾病の結果として解釈される場合があり、1つの疾病の存在が別の疾病の診断に影響する可能性があるため」と本研究の執筆者は述べている。

 研究者は、最初の疾病による余命減少の可能性が、生存して2つ目の疾病を発症する可能性を低下させるという点を考慮した上で、調査期間中に死亡した患者でも生存している患者でも、同様の結果が得られるとしている。

 この2つの疾病の関係の解明が、両疾病の新たな治療法の開発に役立つと期待できる。

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2013年7月19日 提供:米国学会短信